ベタ踏みで発動する「電気ブースト」 メルセデスAMG C 63 S E パフォーマンスへ試乗 大きく重いサルーンに

公開 : 2024.08.04 19:05

AMG Cの歴代で初めてハイブリッドになった63 四輪駆動と後輪操舵システムも採用 キックダウンで発動する電気ブースト 大きく重いサルーンに感じる身のこなし 英編集部が評価

高性能サルーンを残そうとしたAMGの努力

メルセデスAMGは、スーパーなCクラスの切り札として、W202型の時代からV型8気筒エンジンを押し込んできた。しかし時代は変化し、最新のC 63へ搭載されるのは、直列4気筒ターボと電気モーターだ。

V8エンジンのCクラスがリリースされていなければ、メルセデスAMGは現在のような成功を掴んでいなかったかもしれない。それでも同社の上層部は、時代錯誤の組み合わせだと受け止められ得ると、最新世代では判断したのだろう。

メルセデスAMG C 63 S E パフォーマンス(英国仕様)
メルセデスAMG C 63 S E パフォーマンス(英国仕様)

また欧州では、CO2排出量に対してペナルティがある。クラス上のサルーンには、ハイブリッド化されたV8エンジンが継続される可能性はあるが、Cクラスは販売数が多すぎ、反則金も増えてしまう。残念だが、これが現実だ。

メルセデスAMGは、先代へ劣らない訴求力を求めて、リスクを恐れず多彩な技術を投入した。正直なところ、筆者は大成功の結果には至っていないように思う。とはいえ、有能なサルーンを残そうと努力した結果は、高く評価するべきだろう。

C 63 S E パフォーマンスのボンネット内に収まるのは、AMG謹製のM139型ユニットの改良版。巨大なターボが組まれるが、ターボラグを解消するため、電圧400Vの電気モーターが内蔵されている。

その結果、一般的な2.0Lから最高出力475psと最大トルク55.4kg-mという、普通ではないエネルギーを生成。9速マルチクラッチATと、トルクベクタリング機能付きリミテッドスリップ・デフを備える四輪駆動システムを介し、路面へ展開される。

歴代初のハイブリッドで4気筒、四輪駆動

E パフォーマンスの名の通り、駆動用モーターも搭載されている。これには専用の2速ATが組み合わされ、リアデフへ直接繋がる。同社がP3ハイブリッドと呼ぶシステムで、格上のAMG GT 63 SやAMG S 63 E パフォーマンスと、基本的には同一だ。

駆動用モーター単体でも、203psに32.5kg-mと充分強力。4気筒エンジンをアシストするだけでなく、12km前後なら、電気の力だけで走行もできる。

メルセデスAMG C 63 S E パフォーマンス(英国仕様)
メルセデスAMG C 63 S E パフォーマンス(英国仕様)

つまり、最新のC 63は歴代で初めてハイブリッドになり、4気筒になっただけでなく、四輪駆動にもなった。後輪操舵システムも装備されている。

駆動用バッテリーは、メルセデスAMGが独自に開発したユニット。容量は6.1kWhと小さいものの、高いエネルギー密度を実現したという。熱管理は徹底され、大電流での放電・充電に対応し、サーキット走行も想定されている。

搭載場所は、リアアクスルの上の辺り。単体で80kgの重さがあり、30Lのクーラントで冷やされる。

インテリアを見てみると、適度にアップグレードされ、AMG感が醸し出されている。英国仕様では、カーボンファイバー製化粧トリムが標準。マイクロスエード仕立てのAMGステアリングホイールや、AMGパフォーマンスシートが凛々しい。

このシートは、座面が低いものの、クッションは硬め。長距離での快適性という点では、通常のスポーツシートの方がベターだろう。荷室容量は、ハイブリッド・ユニットの影響で、大きく削られている。床面もフラットではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×