【ヒョンデ製BEVバスが屋久島へ進出】 左側通行仕様へ車体構造を再構築したヒョンデの本気度

公開 : 2024.07.23 00:00  更新 : 2024.07.23 10:24

ヒョンデと岩崎産業はヒョンデ製のBEVバスを、脱炭素社会に最も近い島である屋久島の路線バスに投入すると発表した。日本初導入の全長9m中型路線型で「エレク・シティ・タウン」の愛称を持つ。

屋久島にヒョンデのBEVバス導入

ヒョンデのBEVバスが、脱炭素社会に最も近い島である屋久島の路線バスに投入されることが決定した。ヒョンデ・モビリティ・ジャパンと鹿児島県内にバス路線を展開する岩崎産業による、基本合意書締結式が都内のホテルで行われた。

締結式にはヒョンデ・モビリティ・ジャパン株式会社の趙源祥代表取締役社長と、岩崎産業からは岩崎芳太郎代表取締役社長が参加した。

締結式には岩崎産業の岩崎芳太郎 代表取締役社長(左)と、ヒョンデ・モビリティ・ジャパン株式会社の趙 源祥 代表取締役社長(右)が参加した。
締結式には岩崎産業の岩崎芳太郎 代表取締役社長(左)と、ヒョンデ・モビリティ・ジャパン株式会社の趙 源祥 代表取締役社長(右)が参加した。    上野和秀

屋久島はほぼすべての電力が、発電時にCO2を発生しない水力発電で賄われ、カーボン・ニュートラルに最も近い島とされている。鹿児島県は2050年までにカーボン・ニュートラルの実現を目指しており、このような背景から先進的な脱炭素地域として屋久島が選ばれ「CO2フリーの島づくり」推進してきた。

現在島内では岩崎産業傘下の種子島・屋久島交通株式会社が、乗り合いと貸切バスを運行しているが、ディーゼル・エンジンを積むバスが使用されている。

岩崎産業は「屋久島のゼロエミッション」化に尽力したいという強い想いから、ヒョンデ製BEVバス「エレク・シティ・タウン」の導入を決断したのである。

導入されるヒョンデ・エレク・シティ・タウンとは

ヒョンデ社製バスの日本上陸は今回が初めてではなく、2009年からディーゼル・エンジンを積む大型観光バスの「ユニバース」を販売しており、既に約900台が各地で活躍している。

今回屋久島に導入されるのは、ヒョンデ社にとって日本初導入となるBEVバスとなる。ヒョンデ社はすでに各タイプ累積で6000台ものBEVバスを韓国市場に送り出している実績を有する。

締結式には岩崎産業の岩崎芳太郎 代表取締役社長(左)と、ヒョンデ・モビリティ・ジャパン株式会社の趙 源祥 代表取締役社長(右)が参加した。
締結式には岩崎産業の岩崎芳太郎 代表取締役社長(左)と、ヒョンデ・モビリティ・ジャパン株式会社の趙 源祥 代表取締役社長(右)が参加した。    ヒョンデ

その幅広いバリエーションの中から、今回導入されるのは全長9mの中型路線型BEVバスで、「エレク・シティ・タウン」の愛称名が付けられている。

全長9mの中型路線用バスは、地方のローカル路線はもとより都市部の狭隘路線でも活躍する扱い易いサイズといえる。日本のメーカーに中型路線用のBEVバスは存在せず、ディーゼル・エンジンを搭載するモデルのみが販売されている。

日本で数多くのBEVバスを販売する中国のBYDだが、全長9mの中型路線用バスのJ7は現時点で予告段階にあり、2025年秋に納車を開始する予定とアナウンスされている。

ヒョンデ・エレク・シティ・タウンは、日本のバスに見られない斬新なスタイリングが特徴だ。ヒョンデは本国で様々なタイプのエンジン車とBEVバスを製造しているが、日本に初めて投入するのは全長9mの中型でノンステップ前中扉仕様の路線型が選ばれた。

左側通行の日本には韓国の右側通行仕様のバスをそのまま持ち込めない。バスの場合は乗用車のようにステアリング位置を変えるだけで済まず、乗降口が進行左側になるように車体構造を再構築する必要がある。そのため新たに日本仕様を製作したことからも、ヒョンデ社の意気込みが分かろう。

BEVとしてのパフォーマンスは、160kwを発揮するZF製セントラルモーターを採用し、145kWhmの容量を持つリチウムイオン・バッテリーを備え、最高速度80km/h、航続距離はヒョンデ社の測定基準で233-330kmと発表されている。充電方式はCHAdeMOを採用し、90kWh×2の入力に対応し、短時間での充電を実現している。

日本では2025年からの販売を予定しており、価格はバスの世界では事業者の要望により装備品が異なり変動するが、4700~5000万円程度を検討していると発表された。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 編集

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