【SAVとして鍛え抜かれた20余年】X5のステアリングから伝わるBMWの美学

公開 : 2024.07.31 06:05

BMW Xシリーズの元祖にして中核モデルであるX5を、モータージャーナリスト大音安弘が、ロングドライブでテストしてきました。

SUVではなく、SAVとして誕生

BMW X5は、高級SUVニーズの拡大を受け、2000年にブランド初のSUVとして投入した。その際に、BMWは「X5」をSUV(Sport Utility Vehicle)ではなく、SAV(Sports Activity Vehicle)として定義し、新しいカテゴリーのクルマとした。

その違いはひとつのワードに過ぎないが、そこにBMW独自の哲学「駆け抜ける歓び」への情熱が込められていたのだろう。

キドニーグリルの大型化とライトデザインの変更を実施。
キドニーグリルの大型化とライトデザインの変更を実施。    小川和美

かつて、私は初代X5のステアリングを握ったことがあるが、従来のクロスカントリーを意識したSUVとは異なり、他のBMW同様に走りを楽しめるキャラ付けが強く印象に残った。

このX5の誕生を皮切りに、大小の様々なBMW SUVで構成される「X」シリーズが拡大されることになった。ブランドの新たな歴史を築いたモデルだけに、歴代X5は重要な存在として位置付けられている。

4代目となる現行型は、2019年にデビュー。当時最新の先進機能の搭載はもちろんのこと、従来型よりも、車両前方の骨格に高張力鋼板の使用を拡大し、強度を高めながら、約15.5kgの軽量化を実現。

さらにサスペンションは、Mスポーツモデルに、4輪アダクティブエアサスペンションが採用されるなどの進化を遂げている。デザインでは、キドニーグリルが大型化され、ライトデザインもより鋭くし、若返りを図ったのが特徴であった。コクピットデザインもデジタルメーターへと置き換えられ、先進感も強調されていた。

最新のラインナップは

その最新仕様が、2023年4月のビッグマイナーチェンジモデルである。フェイスリフトを始め、カーブドディスプレイを中心とした新コクピットへの変更が主な特徴だ。

そのデザインでは、最新BMWデザインを採用することで、重厚さが与えられ、より高級感が増したものの、個人的には持ち味のスポーティさはやや薄れたように思える。新デザインのヘッドライトでは、BMWモデルとして初めて採用となる矢印型デイ・ライト機能を有したLED式に。この最新アイコンの採用は、Xシリーズの中で重要性を表現したといえよう。

ラインナップ唯一のPHEV。航続距離は110.3km(WLTCモード)。
ラインナップ唯一のPHEV。航続距離は110.3km(WLTCモード)。    小川和美

最新のラインアップは、3.0L直列6気筒クリーンディーゼルターボ「xDrive 40d M Sport」と48Vマイルドハイブリッド仕様の4.4L V型8気筒ガソリンターボを積むMパフォーマンスモデル「M60i XDrive」とMハイパフォーマンスモデル「X5M Competition」に加え、プラグインハイブリッド(PHEV)「xDrive50e M Sport」を用意。限定車の「xDrive 35d Edition X」を除き、全て4WDのM仕様のみとなる。

今回の試乗車は、ラインナップ唯一のPHEVだ。

意外なことに、カタログモデルの中では、PHEVがエントリーグレードに位置する。しかし、その性能を侮ることなかれ。エンジンには、BMW自慢の3.0L直列6気筒ターボを搭載し、エンジン単体で最高出力230kW(313ps)、最大トルク450Nmを叩き出す。そこに組み合わされる電気モーターも最高出力145kW(197ps)、最大トルク280Nmと、3.0Lエンジン並みの性能を有する。

そのトータル性能は、最高出力360kW(489ps)、最大トルク700Nmに達する。さらにプラグインハイブリッドであるため、EV走行も可能で、最高速度は140km/h、航続距離が110.3km(WLTCモード)を備えているので、日常走行を電気だけで賄うことも出来るのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大音安弘

    1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃よりのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材を行う。原稿では、自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がける。愛車は、スバルWRX STI(VAB)とBMW Z4(E85)など。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。

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