【SAVとして鍛え抜かれた20余年】X5のステアリングから伝わるBMWの美学

公開 : 2024.07.31 06:05

PEHVの「50e」を選ぶメリット

試乗時は、12.4kWhのリチウムイオン電池が満充電の状態であり、メーター上には126kmの走行が可能と表示されていた。このため、初日の移動は、ほぼ電気で賄うことが出来た。

静粛性の高さもあり、高速道路走行を含め、車内は静か。モーターによる加減速も滑らかなもの。ただBMWの魅力的な直6のサウンドや回転フィールが味わえないことに寂しさを覚えたのも正直なところだ。

後席でゆったり過ごすよりも、運転する楽しさが勝る。
後席でゆったり過ごすよりも、運転する楽しさが勝る。    小川和美

モーター走行が可能なバッテリー残量を割ると、自動的にハイブリッド走行にシフト。そうすれば、パワフルなエンジンが目覚める。そのサウンドがBMWを操っているという満足感を与えてくれる。

そのため、ドライバーはアクセル操作がラフとならないように注意が必要だ。もっとも車両重量が2.5tもあるため、上り坂などではアクセルを強めに踏みたくなるシーンが生じるが、直6にモーターアシストが加わるので、モーター走行と比べて加速が少々荒々しくなるのはご愛敬だ。

もちろん、それもICE仕様ならば気にならない程度なものであるし、丁寧な運転動作を心がければ、滑らかな直6エンジンを活かした高級車らしい振る舞いを見せてくれる。ただエンジンが生む躍動感にBMWらしさを覚え、嬉しくなってしまうのも本音なのだ。

乗り味については、エアサスペンションの採用により、前後席とも快適性は極めて高く、不快な衝撃を感じることもなかった。

X7の登場までBMWフラッグシップSUVの座にあったX5だけに、7人乗り仕様も用意できるほどの大型ボディを備えるが、オーナーカーであろうとしてする姿勢が強い。個人的には、後席でゆったり過ごすよりも運転する楽しさが勝ったのが、X5との過ごした時間の感想だ。そこにSAVを名乗り、X5を鍛えてきたBMWの美学があるのだろう。

今は、仕様の関係か、PHEVの「50e」方が、ディーゼルの「40d」よりも30万円安い。自宅に充電環境が用意できるならば、特に趣味などで深夜早朝に自宅を出る機会が多い人には、EVモードのある「50e」を選ぶメリットは大きいと思う。

そして、現行型でガソリン6気筒エンジンを積むのは、この「50e」だけとなっているのも、BMWファンには注目して欲しいところだ。敢えて弱点を挙げるとするならば、ラゲッジスペースが他のX5よりも小さいことだが、それでも標準で500Lを確保する。また7人乗りが欲しいならば、ガソリン仕様には設定がないため、クリーンディーゼルを選ぶことになる。

今やX5も全てが1千万円越えとなり、伝統の直6エンジンを積み、プラグインハイブリッドである「50e」は、お買い得といえそうだ。

BMW X5 xDrive50e M Sport

全長×全幅×全高:4935×2005×1770mm
駆動方式:4WD
車両重量:2500kg
エンジン:直列6気筒DOHC
使用燃料:ガソリン
総排気量:2997cc
最高出力:230kW/5500rpm(EEC)
最大トルク:450Nm/1750-4700rpm(EEC)
電気モーター:GC1P28M0
最高出力:145kW/7000rpm
最大トルク:280Nm/100-5500rpm
トランスミッション:8速AT
車両本体価格:1260万円

車両本体価格は1260万円(取材車両はオプション付きで1447万4000円)。
車両本体価格は1260万円(取材車両はオプション付きで1447万4000円)。    小川和美

記事に関わった人々

  • 執筆

    大音安弘

    1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃よりのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材を行う。原稿では、自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がける。愛車は、スバルWRX STI(VAB)とBMW Z4(E85)など。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。

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