いまのクルマ、本当に“持続可能”? 名車から考えるデザインの賞味期限 アルファGTV/クーペフィアット

公開 : 2024.07.23 06:25  更新 : 2024.07.24 18:05

デザインの歴史は財産だ!

クリス・バングルの名を世間に知らしめた1台がクーペフィアットだ。4mと少しの全長に大人4名が過ごせる車内空間と、十分以上のラゲッジを有し、優れた実用性を備える。車台とパワートレインは当時の他車種からの流用を中心にまとめられている。クルマのパッケージングとしての完成度は高い。

クーペフィアットのハイライトは、何を差し置いても、この唯一無二のボディに尽きる。巨大なプレスで機械的に加工されたようなGTVに対して、クーペフィアットは、職人が木型を手に金属板を叩き出したような造形。ひとつひとつのディテールは古典的ですらある。盛り上がったフロントフェンダーの峰しかり、むき出しのフューエルキャップしかり。

アルファGTV/クーペフィアット
アルファGTV/クーペフィアット    小川和美

それでいて、世に産み落とされた1台のクルマとして、カタチが古びない。「ことし発表されたBEVです」と告げられても受け入れてしまいそうだ。いま見ても年季を感じさせない。

そう感じさせる一因は、GTVと同様、一見奇抜な造形も機能に即しているからではないだろうか。たとえば、前後のフェンダーは通常の半円形で処理するのではなく、前傾した鋭利な切れ込みで処理した。想像してほしい。もしクーペフィアットが平凡なフェンダーを備えていたら、そのビジュアルはいかにも凡庸で退屈であっただろう。

奇をてらったようでいて、そこにはかならず機能が内在する「意味のある」デザイン。それこそがこの2台にタイムレスな魅力をもたらしている。2024年のこんにち、世に溢れているクルマたちに目を向けるとどうだろうか。意味もなくキャラクターラインをこねくり回し、これでもかとメッキ加飾を加える。

10年、20年と時を重ねてなお、輝きを放ち続けるのはどんなデザインか。持続可能性が叫ばれるいま、メーカーだけでなく消費者も、来たる明日だけではなく、これまでの足跡に目を向けて考える必要がある。

試乗車のスペック

アルファロメオGTV

全長×全幅×全高:4230×1780×1280mm
駆動方式:FF
車両重量:1370kg
パワートレイン:V型6気筒1990cc+ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:231ps/6000rpm
最大トルク:27.6kg-m/2500rpm
ギアボックス:5速マニュアル
タイヤサイズ:205/50R16(フロント・リア)

フィアット クーペフィアット

全長×全幅×全高:4250×1765×1340mm
駆動方式:FF
車両重量:1320kg
パワートレイン:直列4気筒1995cc+ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:195ps/5500rpm
最大トルク:30.2kg-m/3400rpm
ギアボックス:5速マニュアル
タイヤサイズ:205/50R15(フロント・リア)

アルファGTV/クーペフィアット
アルファGTV/クーペフィアット    小川和美

記事に関わった人々

  • 執筆

    香野早汰

    Hayata Kono

    1997年東京生まれ。母が仕事の往復で運転するクルマの助手席で幼少期のほとんどを過ごす。クルマ選びの決め手は速さや音よりも造形と乗り心地。それゆえ同世代の理解者に恵まれないのが悩み。2023年、クルマにまつわる仕事を探すも見つからず。思いもしない偶然が重なりAUTOCAR編集部に出会う。翌日に笹本編集長の面接。「明日から来なさい」「え!」。若さと積極性を武器に、日々勉強中。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。

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