AMGの手で「6.0L化」されたE 60 W124型 メルセデス・ベンツ500 E(2) 本物としての風格

公開 : 2024.08.10 17:46

重要なモデルとしてメルセデスを支えたW124 ポルシェが設計した高速サルーンの500 E 6.0L V8を載せたE 60 AMG 吹き飛ばされるように突き進むボディ 英編集部が垂涎の1台を振り返る

6.0L V8エンジンを載せたE 60 AMG

1991年に発売された、メルセデス・ベンツ500 Eの英国価格は5万8949ポンド。レカロ・シートは電動で、クルーズコントロールとエアコンは標準装備ながら、明らかに高額だった。レザー内装は、約1800ポンドのオプションだった。

価格だけでなく、左ハンドルのみという理由で、英国での反響は小さかった。1994年の生産終了までに、グレートブリテン島へ正式に輸入されたのは29台だけだ。

メルセデス・ベンツE 60 AMG(W124型/1995年式/欧州仕様)
メルセデス・ベンツE 60 AMG(W124型/1995年式/欧州仕様)

対して、北米には1528台が輸入された。バブル景気が減速していた日本にも、1184台が運ばれている。合計の生産数は1万479台。これには、1995年に納車された120台も含まれる。

モデル後期のE 500には、リミテッド仕様が登場。ブレーキとフロントアクスルは、V12エンジンのSL 600譲りで、17インチのエボリューション・アルミホイールを履き、バーズアイ・メープルのウッドトリム、レザー内装などで差別化された。

380psの6.0L V8エンジンを載せた、E 60 AMGも45台が作られている。今回ご登場願った1台もそれ。メルセデス・ベンツが保有する、1100台のクラシック車両の1つだ。

フルオプションの1995年式で、塗装はサファイア・ブラック。ヒーター内臓のレザーシートだけでなく、ステアリングコラムも電動で調整可能。エアコンも備わる。

ツートーン塗装と17インチ・アルミホイールを履く、LEパッケージでもある。通常のE 500と見た目で異なる点は、リアのエンブレムと四角いマフラー程度だ。

ちなみに、非公式に100台前後のE 500がAMG仕様へ変更されている。その多くは、日本へ届けられたという。

本物のスポーツサルーンとしての風格

1990年代半ばのAMGは、まだ独立した組織だった。メルセデス・ベンツ・ブランドを擁するダイムラー・ベンツの本社から、約25km離れたアッファルターバッハに工場を構えていたことは、変わりないが。

AMGへE 500が届けられると、職人が手作業で組み上げたM119型の6.0L V8エンジンをドッキング。専用サスペンションも組まれた。

メルセデス・ベンツE 60 AMG(W124型/1995年式/欧州仕様)
メルセデス・ベンツE 60 AMG(W124型/1995年式/欧州仕様)

2024年に見るE 60は、思いのほか小柄。チューニングされた大型リムジンというより、落ち着いた、本物のスポーツサルーンとしての風格を漂わせる。この匿名性が、E 500の魅力といえるだろう。

とはいえ、四角いボディを支えるタイヤが外へ張り出した低いスタンスは、単なるタクシーのベースモデルとは一線を画す。特にこのE 60 AMGの場合は。猛烈な加速力を秘めたメルセデス・ベンツとして、特定のファンにとって垂涎なことも理解できる。

17インチホイールを包む、245/45サイズのタイヤは、当時ではかなり太いものだった。今では平均的なサイズに思えるが。

ボンネットを開くと、6.0L V8エンジンがミッチリ詰まっている。キャビンを隔てるバルクヘッドには、大量の断熱材が貼られている。プラスティック製のカバーで覆う時代が、既に始まっていたこともわかる。

AMGが公証した最高出力は380psで、最大トルクは59.0kg-m。だがこれは、メルセデス・ベンツが生産していた6.0L V12エンジンを考慮し、控え目に見積もられた数字だといわれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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