成功と破綻 2度も破産したフィスカー、激動の歴史 華やかなGTから象徴的なセダンまで

公開 : 2024.07.25 18:05

災難に見舞われたハイブリッド車

カルマは最高出力400ps、最大トルク135kg-mという驚異的なパワーを誇りながら、トヨタプリウスよりもクリーンで、ユニークなスタイルとアルミ製スペースフレームを持つ。20kWhのリチウムイオンバッテリーと2基の電気モーターをリアに搭載し、電気のみでの航続距離は80kmに達する。バッテリーが減るとポンティアック系統の2.0L 4気筒エンジンがガソリンを電気に変え、さらに400km走る。

大量の新技術が盛り込まれたため、カルマの開発は難航したが、最終的に2011年、フィンランドの受託生産業者であるヴァルメット社で生産されることになった。

フィスカー・カルマ
フィスカー・カルマ

価格は約10万ドルで、当初目標の8万ドルを大幅に上回った。それでもフィスカーは、標準のセダン、カブリオレのサンセット、ハッチバックのサーフの3種類のボディスタイルを展開し、2015年までに10万台の販売を達成できると考えていた。

AUTOCARの最初のレビューはこうだ。「真面目なドライバーは、今すぐ目をそらして構わない。しかし、皆さんがロンドン郊外に住み、ロンドン市内の職場で働いているとしよう。往復の疲れを癒してくれる、時代を超越したエレガンスと卓越した効率性を備えたクルマが欲しいなら、これ以上の武器はないだろう」

ディカプリオをはじめ、米国の政治家アル・ゴアやコリン・パウエル、ミュージシャンのシーロー・グリーン、ジャスティン・ビーバー、カルロス・サンタナ、スポーツ界のスター選手など、セレブリティたちもこのクルマを愛用した。

強気のフィスカーは2012年、より大型のレンジエクステンダーEVセダン「アトランティック」を発表したが、発売前に災難に見舞われた。同社唯一のバッテリーサプライヤーであるA123システムズが、2度のリコール(カルマ関連のリコールも含む)を出した後に破産を申請したのだ。

それまで生産されたのはわずか2450台ほどで、そのうち338台はニュージャージー州の港で待機中にハリケーン「サンディ」による鉄砲水が発生し、浸水で失われてしまった。

フィスカー氏は翌年3月、「事業戦略に関する意見の相違」を理由に辞任した。11月までに同社は破産し、連邦政府から受けた1億9200万ドルの融資のうち1億3900万ドルが未払いとなった。

倒れたフィスカーに対しては、元GMのトップであるボブ・ルッツ、BAIC、吉利汽車、万向汽車などなど、買収を提案する者が後を絶たなかった。フィスカーを勝ち取ったのは、すでにA123システムズを救った万向汽車で、2016年に改良型カルマ・レヴェロの販売を開始した。フィスカー氏はその後、新たに同名のEVメーカーを設立した――しかし、それがどうなるかはご存知の通りだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    クリス・カルマー

    Kris Culmer

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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