ポルシェ911にF1エンジン 600馬力超のレストモッド「TAGターボ」はなぜ生まれたのか

公開 : 2024.07.26 18:05

「オリジナルであること」が重要

3台のチャンピオンシップ・エディションは当初の計画にはなかったが、合計14台のTAGターボを製造するという意志は固い。もちろん、入手可能なエンジンの数には限りがあり、「保険」として1基余分に購入しているが、これを使用するつもりはない。

「エンジンをリメイクしたり、鋳造品を作り直したりすることはできます。ですが、これを購入した人の多くは、ラップタイムが目的ではありません。これはそういうものではないのです」

ランザンテ社を率いるディーン・ランザンテ氏
ランザンテ社を率いるディーン・ランザンテ氏

「F1ドライバーがF1レースウィークを走ったマシンに乗れる。これは特別なことです。ほとんどの人がそのために購入しました。マクラーレンMP4を買える人はどれだけいるでしょうか? 数人はいるかもしれませんが、そのうち運転できる人は何人いるでしょう? ごくわずかです」

「リメイクすることはできますが、同じ魂を持つことはありません。オリジナルのエンジンであることが重要なのです。マクラーレンからオリジナルのマシンを借りて、スキャンしました。これ以上、何台も作り出したら、意味がない」

レッドブルRB17の改造に挑戦

TAGターボ911は、ランザンテ氏が手がけたプロジェクトの中で「最も困難なもの」だったという。

では、次は何をするのだろう?「実を言うと、わかりません」

グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで公開されたレッドブルRB17
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで公開されたレッドブルRB17

「多くの人が『ポルシェのプロジェクトは成し遂げたね』と言っていました。次のプロジェクトはあるのか? 市場は飽和状態です。他の人がやっていることを追いかけるのではなく、何か新しいもので先頭に立ちたい。他人を非難しているわけではありませんが、同じことはしたくない。自分の力で立ちたいのです」

インタビューの数日後、ランザンテは大きな声明を出す。

レッドブルRB17は、エイドリアン・ニューウェイ氏が設計した、11200馬力のV10ハイブリッドを搭載するサーキット専用マシンである。

レッドブル・テクノロジーのクリスチャン・ホーナーCEOは、サードパーティの手によってRB17を公道走行可能な仕様に改造する可能性を示唆し、「それが可能な企業はいくつかあると思う」と述べていた。

最初にそこに到達するのはランザンテかもしれない。同社は声明で「公道での走行を可能にするために必要なアップグレードの開発を直ちに開始する」と述べた。

完成品が待ち遠しい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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