激レアな「完全ノーマル」 トヨタ・スープラ(A80) UK版中古車ガイド(1) 英国仕様は330ps!

公開 : 2024.08.11 17:45

クラシックとして価値が高まる4代目スープラ 多くが改造されノーマルは激レアに 加速だけでなく操縦性も優秀 基本整備で数10万kmは耐える2JZ型ユニット 英編集部が魅力を振り返る

目的地を過去最速で目指せたロードカー

1990年代が始まる頃、日産は300ZX(フェアレディZ)を、三菱は3000GT(GTO)をリリース。マツダRX-7をモデルチェンジさせたことで、トヨタは一層特別なモデルを必要とした。

他を出し抜くパワーだけでなく、高剛性なボディシェルと、許容力の高いサスペンションの獲得には時間を要したが、自ら設定した高いハードルを技術者はクリア。優れた操縦性を備える4代目、A80型スープラは1993年に誕生した。

トヨタ・スープラ(A80型/1993〜2003年/英国仕様)
トヨタ・スープラ(A80型/1993〜2003年/英国仕様)

当時のAUTOCARは、「目的地を過去最速で目指せるロードカー」だと評価。ところがグレートブリテン島への導入数は、3代目が1年に3000台だったのに対し、年間250台と非常に少なかった。結果として、カリスマ性は一層増したといえるが。

3.0L直列6気筒「2JZ」エンジンは、シーケンシャル・ツインターボで過給。英国仕様は330psの最高出力を誇り、リミッターで制限された最高速度は251km/h。それをカットすれば、ノーマルでも290km/hに迫った。

3000rpm以下ではパワーが不足気味で、ステアリングホイールの感触は希薄。車内の人間工学は改善が可能で、リアシートと荷室は狭かった。それでも、1990年代や2000年代に生まれ育ったクルマ好きにとって、垂涎の的となっている。

日本や北米仕様では自然吸気も選べたが、英国仕様は2JZ-GTE型のツインターボのみ。トランスミッションは、6速マニュアルか4速オートマティックを指定できた。

装備は充実し、レザー内装とエアコン、クルーズコントロールが標準。可動式のフロントスプリッターも、英国仕様では標準装備とされた。

改造された例が殆ど 内容次第で1500馬力も

現在、英国で流通している4代目スープラは、日本から並行輸入された車両が中心。日本仕様はターボとインジェクターが小さく、カムのリフト量も英国仕様より低い。最高出力は、自主規制された280psへ抑えられている。

他にも違いは少なくなく、ヘッドライトカバーはガラスではなくプラスティック製で、突き出たウオッシャーノズルは付かない。ボンネット上のエアインテークはなく、テールライトのパターンが異なり、リアアクスルのレシオも低く設定されている。

トヨタ・スープラ(A80型/1993〜2003年/英国仕様)
トヨタ・スープラ(A80型/1993〜2003年/英国仕様)

LSDはオプション。また1995年以前の車両では、ブレーキディスクの直径も小さい。

先述の通り、228psの自然吸気エンジンに5速MTが組まれた仕様もあった。これにはトラクション・コントロールが備わらず、ABSもオプション。内装はクロスで、廉価設定にある。

ハリウッド映画の影響もあるが、何らかの改造が施されたスープラが殆ど。チューニング次第で1500馬力以上を叩き出すというから、試したくなる気持ちもわかる。

4代目スープラは、交通量の少ない郊外で最高の体験を提供する。ボディシェルは強固で、高度なシャシー技術により、カーブの連続する道を颯爽と駆け抜けられる。この時代の最速の1台といっていい。

馬力や加速だけでなく、操縦性にも優れ、ドライバーへ忘れられない記憶を残すはず。もし印象が冴えない場合は、どこかの調子が完璧ではない証拠といえるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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