退屈しない自動車デザイン 大手を負かしたクリス・バングルは「先駆者」か「破壊者」か
公開 : 2024.08.10 18:05
バングルのフィアット時代(1985年)
バングルは1985年にオペルを離れ、フィアットに移籍。自動車デザイン専門メディア『Form Trends』のインタビューで彼は、フィアットにパンダの後継車デザインを依頼されたと回想している。しかし、1980年に発表されたイタルデザインによる初代パンダは、2003年まで生産が続けられた。彼のデザインは結果的に、日の目を見ることはなかった。
クーペ・フィアット(1990年)
クーペは、バングルがフィアットで手がけた最も注目すべきプロジェクトである。1990年にスケッチを始め、最終的にティーポと共通のプラットフォームをベースに、印象的なルックスの2ドアモデルを作り上げた。
デザインに対する彼のユニークなアプローチは、すでに板金に浸透していた。丸いテールライトに見られるようなレトロなスタイリングと、車輪上部の斜めのラインなど現代的な要素を掛け合わせ、ピニンファリーナの案を退けるに至った。
バングルのBMW時代(1992年)
1993年にクーペがデビューしたとき、バングルはもうフィアットを去っていた。1992年10月、BMWは彼をデザイン部門のトップに任命した。BMWが米国人をデザイン部門責任者に据えたのは初めてで、多くの人を驚かせた。当時、BMWのラインナップは3、5(写真)、7、8シリーズで構成されており、どれも比較的コンサバティブなファミリー性を帯びていた。
BMW Z3(1995年)
BMW Z3は、バングルの指揮下で永島譲二がスタイリングを担当したモデルである。2人は1980年代初頭にオペルで短期間一緒に働いていた。Z3はまた、サウスカロライナ州スパータンバーグ工場で生産された最初のBMWの1つでもある。
ロングノーズ&ショートデッキの伝統的なスポーツカーといったプロポーションは、過去のBMW製ロードスターにも通じるが、前身であるZ1よりも野暮ったさはかなり抑えられている。前輪の後ろにある通風孔は、507への控えめなオマージュである。
BMW Z9グランツーリスモ・コンセプト(1999年)
BMWはZ9グランツーリスモ・コンセプトのデザインを、バングルにゼロから作らせた。1999年のフランクフルト・モーターショーで発表されたカーボンファイバー製ボディのZ9は、凸面と凹面を等しく取り入れた彫刻的な外観を持ち、新世紀に向けてBMWのデザイン言語を予告した。
また、後にバングルのほとんどのデザインを特徴づける、いわゆるフレイム・サーフェシングを業界に初めて知らしめた。そしてZ9は、2003年に登場した新生6シリーズを予感させるものであった。
画像 既存の枠にとらわれないクリス・バングルの自由な発想【クーペ・フィアットとBMW Z3を写真でじっくり見る】 全39枚