好き嫌い分かれる「大胆」デザイン BMWを変えたクリス・バングル 忘れられないクルマたち

公開 : 2024.08.10 18:25

BMWに入社以来、新しいデザイン言語を切り開いてきたクリス・バングル。同社初のSUVやコンパクトカー、変形ボディのコンセプトモデルなど、後のBMWデザインに大きな影響を残した作品を振り返る。

BMW CS1コンセプト(2002年)

(この記事は『退屈しない自動車デザイン 大手を負かしたクリス・バングルは「先駆者」か「破壊者」か』の後編です。オペルフィアット時代の作品については前編で紹介しています)

2002年のジュネーブ・モーターショーで発表されたCS1コンセプトは、なぜBMWがデザインの全面刷新を図ったか、その理由を教えてくれるものだ。BMWは新しいセグメントへの参入と、過去に断念したセグメントへの復帰によってラインナップを拡大しようとしていたのだ。

BMW CS1コンセプト(2002年)
BMW CS1コンセプト(2002年)

同じような見た目のクルマが3台あるのも望ましくはないが、それが7台以上に増えるのはもっと良くない。初代1シリーズはそうした新規モデルの1つであり、その姿を予告したのがCS1である。

BMW Z4(2002年)

初代Z4は、フレイム・サーフェシングの最良の例であった。プロポーションはZ3(そしてそれ以前の全BMW製ロードスター)とほぼ同じだが、デザインの細かい部分はまったく新しいものであった。

横顔を見ると、連続したラインがボンネットからヘッドライトの上を通り、前輪を通って車体側面に伸びている。さらに後輪を通り、リアバンパーに達する。ドアの前には斜めにプレスラインが入り、上下のラインと合わせて「Z」の文字を構成している。

BMW Z4(2002年)
BMW Z4(2002年)

BMW 5シリーズ(2003年)

バングルの指揮の下、5シリーズは劇的な変貌を遂げた。E39世代のデザインは控えめだが、その後継車はワイドなキドニーグリルとフェンダーに伸びるヘッドライトを備えた、より表情豊かなフォルムになった。トランクリッドは7シリーズよりも繊細だった。

E60世代の5シリーズに無関心でいられた者はいなかった。そしてBMWの歴史上初めて、5シリーズと7シリーズの外観が明らかに異なるものとなった。それがバングルの目指した境地である。

BMW 5シリーズ(2003年)
BMW 5シリーズ(2003年)

BMW 6シリーズ(2003年)

Z9グランツーリスモ・コンセプトはE65世代7シリーズに影響を与えたが、スタイリングの点では2003年に登場した新生6シリーズが最も直接的な量産バージョンと言える。バングル率いるデザイナー陣は、6シリーズの短いホイールベースに対応するためにプロポーションを作り直し、ガルウィングドアの採用は見送った。

BMW 6シリーズ(2003年)
BMW 6シリーズ(2003年)

BMW X3(2003年)

BMWがSUVに深く踏み込んでいく中で、バングルは1990年代に使われていたマトリョーシカ的(見た目は同じでサイズだけ違う)スタイリングには戻れないと主張した。初代X3は、当時発表を控えていた5代目3シリーズと多くのパーツを共有していたが、フロントのキドニーグリルを除いて、デザインの共通性はなかった。

また、単なるX5の小型版でもなかった。スポーティかつハンサムなデザインと、SUVセグメントの成長に関するBMWの的確な予測が相まって、X3は大成功を収めたのである。

BMW X3(2003年)
BMW X3(2003年)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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