アウトドア/オフロード・ユーザーにも! いすゞD-マックスへ英国試乗 コスパ優秀 オンロードも◎

公開 : 2024.08.07 19:05

常用域なら充分強力 褒められるオンロードマナー

さて、確認が長くなったが発進させよう。エンジンを始動すると、実務的な4気筒ディーゼルターボらしい、ノイズと振動が生じる。洗練という言葉は似合わない。

車重は2030kgあるが、164psと36.7kg-mという数字以上に走りは活発。上質さは別として、発進停止の多い市街地でもオフロードでも、パワー不足は感じないだろう。

いすゞD-マックス・マッドマスターV-クロス(英国仕様)
いすゞD-マックス・マッドマスターV-クロス(英国仕様)

1500rpmから2000rpmの間でパワーの上昇が鈍り、追い越し加速時は高めの回転域を保つことにはなる。それでも、ターボのブースト圧が高い限り、50km/hから100km/hまでの間なら力強い。高速巡航時のエンジンは穏やかだ。

アイドリングストップ機能は、もう少し煮詰める余地がある。エンジン停止時の揺れが大きく、発進時の再始動は遅れ気味に思えた。

舗装路での走りは、安定していて心強い。思い切りブレーキをかけても不安定にはならず、ワダチを超えても必要以上に揺さぶられることはない。ブレーキの効き自体も強く、漸進的で好印象だった。

ステアリングの反応は、オンロードでは若干曖昧。カーブでは、ステアリングホイールをどの程度回すべきか、慣れるまで探る必要がある。扁平率60のオールテレーンタイヤが、正確性の足を引っ張っている。

とはいえ、カーブでの姿勢制御は優秀だ。リアサスペンションはリーフスプリングで、重い荷物を想定したセットアップといえるが、アンチロールバーがボディロールを抑制。路面へしなやかに追従し、マナーは優秀といっていい。

想像以上の悪路性能 コスパに長けた選択肢

オフロードに出れば、ステアリングは正確に転じる。路面が直接目視できないような勾配でも、手応えを頼りに進むことができる。最小回転直径は12.5mと小さく、小回りはかなり利く。アマロックは12.9mだ。

四輪駆動システムの反応速度は、このクラスの最速。通常は前輪駆動で走るのだが、最大104km/hまでなら、0.69秒でリアのドライブシャフトを接続できるという。

いすゞD-マックス・マッドマスターV-クロス(英国仕様)
いすゞD-マックス・マッドマスターV-クロス(英国仕様)

試乗したマッドマスターV-クロスは、ピックアップトラックへ想像する以上に、過酷な条件を軽々と走破してみせた。イネオス・グレナディアにも、劣らないかもしれない。

低速域での乗り心地は、滑らかな路面でも落ち着かない。フォード・レンジャーの上質さが、羨ましく感じるかも。

燃費は、約110km走らせた平均で12.6km/L。ライバルより優れるとはいえないだろう。牽引重量は、3500kgまで対応する。

フォルクスワーゲントヨタなどへ並ぶ選択肢を目指した、いすゞD-マックス。エンジンの洗練性やステアリングの正確性、インフォテインメント・システムなどが、それらへ届いていないことは否定できない。

しかし、特有の魅力があることも事実。悪路性能はライバル以上といえ、いすゞが注力したという、オンロードでのマナーも充分に優れる。マッドマスターV-クロスの、勇ましい容姿にも惹かれる。

お手頃な価格にも関わらず、装備は極めて充実してもいる。コストパフォーマンスに長けた、ピックアップトラックなことは間違いない。

◯:ワイルドなスタイリング 実際に堅牢な品質 圧倒的なオンロード性能
△:ディーゼルエンジンの洗練性 旧式なインフォテインメント・システム

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

いすゞの人気画像