V8エンジンの隠れた名車:アルファ・ロメオ・モントリオール 最高の901型:ポルシェ911 S 2.4 (1)

公開 : 2024.08.17 17:45

アルファ・ロメオの隠れた名車、V8エンジンのモントリオール 901型の走行性能を極めたポルシェ911 S 2.4 郊外の開けた道で素晴らしい魅力を放つ 1970年代の2台を英編集部が乗り比べ

アメリカ議会の規制が生んだ911 S 2.4

イタリア車とドイツ車。クルマ好きなら、この2種類にはざっくりとしたイメージを抱かれると思う。一方は、美しい容姿や素晴らしい走りを楽しめるものの、製造品質や人間工学が今ひとつ。他方はその逆、といったところだろう。

しかし歴史を振り返ると、そんな概念を少し破ったモデルもゼロではないと発見できる。モントリオールは、アルファ・ロメオが長年生産してきたどんなモデルより快適で洗練されていた。ポルシェは、飾り気のない911の体験をS 2.4で一層磨き込んでいた。

手前からアルファ・ロメオ・モントリオールと、ポルシェ911 S 2.4
手前からアルファ・ロメオ・モントリオールと、ポルシェ911 S 2.4

1972年に911 S 2.4が誕生したキッカケは、アメリカ議会。主要市場のカリフォルニア州を中心に排気ガス規制が強化され、有鉛ガソリンの使用量は削減される方向にあり、ポルシェにはパワーを維持する改良が求められた。

そこで、排気量が2195ccだった水平対向6気筒エンジンは、2341ccまで拡大される。圧縮比は9.8:1から8.5:1へ落とされ、窒素酸化物の排出量を削減。必要なオクタン価が
小さくなり、燃え残りの炭化水素も減らされた。

1970年代に入り、大排気量のV8エンジンが馬力を削られる中で、ポルシェは有能なユニットを完成。最高出力は10ps、最大トルクは1.6kg-m追加され、低回転域での扱いやすさは向上していた。

トルクの増大によりトランスミッションの強化も必要になり、それまでのタイプ901ユニットに代わって、915ユニットへ置換。1969年にホイールベースは延長されていたが、S 2.4ではリアホイールも6.0Jへワイドになった。

動力性能と操縦性が大幅に進化した901型

ところが、そんな喜びも束の間だった。更に厳しい排気ガス規制へ合わせ、排気量は2.7Lへ拡大されるが、最高出力は15psダウン。衝突安全規制も強化され、細身のクロームメッキ・バンパーは、無骨な通称「アコーディオン」バンパーへ変更された。

ポルシェは、BMWやMGなど同時期のライバルより、巧妙にアメリカの新基準へ対応したといえる。それでも、1973年までの約2年間に提供されたS 2.4は、901型では最高傑作の1つとしてみなされるようになった。

ポルシェ911 S 2.4(901/1972〜1973年/欧州仕様)
ポルシェ911 S 2.4(901/1972〜1973年/欧州仕様)

この911 S 2.4は、エンジン以外にも改良を受けていた。フロントスカートが与えられた、初の量産911でもあった。

ポルシェの技術者は、この頃から空力特性へ注目。ドイツ・シュトゥットガルト大学の風洞実験施設を利用し、模型のバンパーへテープで貼った紐の流れを見ながら、形状を詰めていった。

フロントスカートは後付けではなく、ベース部分のバランスパネルから新規にプレス。空気抵抗を示すCd値は、0.41から0.40へ減っただけながら、フロントのリフト量は83kgから46kgへ大幅に抑えられた。

かくして、既に10年近い歴史を有していた901型は、見た目に大きな違いがなかったとしても、動力性能と操縦性が大幅に進化していた。高い製造品質だけでなく、地味なインテリアと少し不完全な人間工学なども、そのままといえたが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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