マフラーの音が懐かしい? アバルト500e x ミニ・クーパー SE(1) 小さな電動ホットハッチ乗り比べ

公開 : 2024.08.10 09:45

欧州伝統の小さなハッチバック、アバルト500とミニ・クーパーが電動世代へ 内燃ホットハッチへ別れは告げられる? ドライバーズカーとしての可能性を探るべく、英編集部が乗り比べ

内燃エンジン版と似た運転した印象

まだ発展期にあるバッテリーEVだからこそ、新領域へ挑むチャンスがある。大胆なチャレンジは難しいご時世だとしても。

自動車市場には、宇宙船のような新モデルの購入をはばからない、新しい物好きのアーリーアダプターが一定数存在する。しかし、バッテリーEVのラインナップがある程度出揃い、ほぼ彼らは満たされたといっていい。

イエローのアバルト500e ツーリスモと、ブルーのミニ・クーパー SE エクスクルーシブ
イエローのアバルト500e ツーリスモと、ブルーのミニ・クーパー SE エクスクルーシブ

2024年の欧州では、アーリーマジョリティへターゲットが進んだ。高い価格は諦めつつ、もっと親近感の湧くモデルが望まれている。そんな人たちの共感を得るであろうモデルが、最新のアバルト500eとミニ・クーパー SEだ。

どちらも、1950年代に発売されたオリジナルを想起させる、馴染みのあるスタイリングをまとう。内燃エンジン・モデルから乗り換えても、深刻なカルチャーショックを受けないよう、技術的な開発も施されている。

実際、今回の比較試乗の前に、3気筒エンジンを積んだ新世代のミニ・クーパー Cをしばらくお借りしていた。その後に電動のクーパー SEへ乗り換えたのだが、殆ど違和感がなかったことに驚いた。運転した印象は、とても似ている。

もちろん、ATが変速することはない。エンジンノイズも聞こえない。ところが公道に出れば、同じファミリーであることを実感する。内燃エンジン版とプラットフォームが異なるにも関わらず。

ドライバーズカーとしての高い可能性

カメラマンのマックス・エドレストンも、アバルト500eを運転して、アバルト595の延長にあると話していた。両メーカーが狙った、親しみやすさが体現されているのだろう。それはつまり、既存のホットハッチと直接的に比較されることも意味する。

果たして、小さな電動ホットハッチというコンセプトは、完成の域へ至ったといえるだろうか。内燃ホットハッチと、実力は肩を並べただろうか。今回は、これを小さな2台で検証してみたいと思う。

アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)
アバルト500e ツーリスモ(英国仕様)

アバルト500eの発売時にも、同様の疑問を抱いた。その頃はまだ電動のライバルが存在せず、比較は難しく、ちょっと答えを濁した。それでも、ドライバーズカーとしての高い可能性を感じたことは間違いない。

筆者がアバルト500eを運転するのは久しぶり。AUTOCARを定期的にお読みいただいているなら、これが長期テスト車両だとお気づきかもしれない。車内にはチョコレートバーのパッケージと、犬の匂いが残っていた。日常的な親和性は高いようだ。

改めて接してみると、フィアット500eも含めて、多くの関心を集めることへ納得できる。先代よりひと回り大きくなったが、まだ間違いなく小さい。ユーロNCAPの安全性試験を考慮すれば、拡大は避けられない。

全長が短く、シルエットはキューブのよう。ブリヂストン・ポテンザが、ボディの四隅で踏ん張っていて可愛い。

ステアリングホイールの感触は濃く、スポーツシートの座り心地は快適。幅員の狭い田舎道でも運転しやすく、すぐに乗り慣れたクルマのように感じられてくる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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