アバルト500e x ミニ・クーパー SE(2) 新型を直接比較 内燃ホットハッチへ「別れ」は告げられる?

公開 : 2024.08.10 09:46

欧州伝統の小さなハッチバック、アバルト500とミニ・クーパーが電動世代へ 内燃ホットハッチへ別れは告げられる? ドライバーズカーとしての可能性を探るべく、英編集部が乗り比べ

一方は小さな高級車 他方はおしゃれな小型車

ミニ・クーパー SEの航続距離は、392km。駆動用バッテリーの容量は49.2kWhある。現実的に、充電が切れるまで320kmは走れるようだ。新しいクーパーには、302kmで183psのEもあるが、今回はアバルト500eと英国価格が近い、218psのSEを選んだ。

電費効率は、同等の条件で走らせて、6.4km/kWh対6.7km/kWhでクーパー SEが僅かに優れた。ちなみに英国価格は、アバルト500eの方が高いものの、残価設定型プランでの支払額は同等だ。

ブルーのミニ・クーパー SE エクスクルーシブと、イエローのアバルト500e ツーリスモ
ブルーのミニ・クーパー SE エクスクルーシブと、イエローのアバルト500e ツーリスモ

2台を並べると、そもそもミニが好きなこともあるが、クーパー SEの方がプロポーションは整っているように映る。丁寧に開発されたことが、細部から伝わってくる。インテリアには、小さな高級車といった雰囲気が漂う。

コスト削減の結果もゼロではなく、実際に押せるハードボタンは限られ、メーター用モニターもない。ここで、開発・製造費はだいぶ節約できているはず。快適なシートの形状もシンプルで、調整できる範囲は先代より少ない。

とはいえ、ダッシュボードやドアパネルを覆う粗い織り目のクロスと、大きく丸いタッチモニターが生む印象は好ましい。ステアリングホイールやドアハンドルなどからは、上質さが伝わってくる。

インフォテインメント・システムは、扱いにくいといわざるを得ない。長方形ではないモニターが、デザイン哲学の延長だとしても。

アバルト500eのインテリアは、おしゃれなコンパクトカーといった感じ。アルカンターラが上手に利用されているものの、硬質なプラスティック製部品も多い。インフォテインメント・システムの操作性は、こちらの方が優れる。

クーパー SEの活発な前輪駆動らしい走り

発進させてみると、クーパー SEのドライバーとの一体感が光る。回生ブレーキの制御が滑らかで、アクセルペダルの加減で違和感なく速度を調整できる。対する500eは、オン/オフの制御といった反応で、スムーズなスピード調整が少し難しい。

速度の上昇とともに、クーパー SEではステアリングホイールへグリップ状態がやんわり伝わってくる。コーナーへ飛び込み、アクセルペダルを緩めると、内燃ホットハッチのように旋回していくのが気持ちいい。

ミニ・クーパー SE エクスクルーシブ(英国仕様)
ミニ・クーパー SE エクスクルーシブ(英国仕様)

濡れた路面で巧みにパワーを制限する、トラクション/スタビリティ・コントロールの制御も優秀。スポーツプラス・モードなら、活発な前輪駆動らしい走りを楽しめる。

アバルト500eは、ステアリングの第一印象は良かったのだが、速度が増してもフィードバックは変わらない様子。コーナーで右足を一気に戻しても、淡々とラインは維持される。路面次第では、アクセルオンでフロントタイヤが一瞬スピンすることもあった。

路面が荒れてくると、サスペンションの特性の違いも顕になる。乗り心地が硬い方はクーパー SEだが、衝撃を吸収しきれないのは500eの方。ストロークが短めで、全高が高いため、ドライバーが揺さぶられるような振動を伴う。

というわけで、クーパー SEへ筆者は軍配を上げたい。このクラスのリーダーとして、内燃ホットハッチへお別れを告げてもいいと思える、優れたバッテリーEVだといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

アバルト500e x ミニ・クーパー SEの前後関係

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