抜群なホットハッチの「キング」 トヨタGRヤリス 8速AT版へ英国試乗 Mモードで表出する魅力

公開 : 2024.08.13 19:05  更新 : 2024.08.27 08:14

ラリーステージで磨かれたホットハッチがアップデート 耐久性の向上へ注力 人間工学と前方視界が改善した車内 最高出力は280psへ Mモードで表出する愛すべき特性 英編集部は絶賛

耐久性の向上へ注力されたアップデート

アップデートされたトヨタGRヤリスが、グレートブリテン島へ初上陸した。同社は当初、ちょっとマニアックなモデル過ぎるという理由で、マイナーチェンジを予定していなかったらしい。

ところが蓋を開けてみれば、GRヤリスは世界的な人気を獲得。これまでに3万2000台がラインオフし、トヨタのラインナップの1つとして定着したといっていい。能力を引き上げるため、改良を施す余裕が生まれたようだ。

トヨタGRヤリス・オートマティック(英国仕様)
トヨタGRヤリス・オートマティック(英国仕様)

むしろ発売当初から、GRヤリスには望ましい運命が待っていたといえる。トヨタが約20年ぶりにゼロから開発した高性能モデルであり、モータースポーツで培った技術を活かし設計されている。

2020年以降、ここまでの熱狂を巻き起こしたクルマは、他に例がないといっていい。日本車に限らず。AUTOCARでの評価は高く、お手頃ドライバーズカー選手権で優勝。年末恒例の英国ドライバーズカー選手権でも、好成績を残している。

改良の概要を見ていくと、耐久性の向上へ注力されたことがわかる。ラジエーターを覆うグリルメッシュは強化され、冷却効率も良くなった。リアのバックライトは、高音の排気ガスがかかるマフラーの間から、テールライト・クラスター側へ移動した。

ボディシェルは、スポット溶接のポイントが15%増え、塗布される接着剤も15%長くなっている。フロントストラットのマウント部分も、剛性が高められた。ブレーキとホイールは従来どおりで、タイヤサイズも変わらない。

人間工学と前方視界を改善 最高出力280psへ

インテリアは、人間工学と前方視界を改善。ダッシュボード上のスイッチ類は、レースハーネスを着用したり、社外品のバケットシートを組むと見えなくなる可能性があり、ドライバーへ近い位置に移動された。

メーターパネルは従来より50mm位置が低くなり、バックミラーは25mm持ち上げられた。シートの取り付け位置も、25mm落とされている。

トヨタGRヤリス・オートマティック(英国仕様)
トヨタGRヤリス・オートマティック(英国仕様)

これらの違いは、前期型に乗り慣れていれば瞭然。バックミラーを避けるように顔を傾け、斜め左方向を確認する必要はなくなった。ちなみに、大きなメーター用モニターも、副産物として得ている。

快適性も増した。望ましい運転姿勢に落ち着け、ステアリングホイールとメーターパネルの位置関係も好ましい。内装素材に触れるべき特徴はないが、車重1300kgの軽いホットハッチだから、豪華さを期待する方がお門違いだ。

1.6L 直列3気筒ターボエンジンとマニュアル・トランスミッションは、内部構造を変更。英国仕様の最高出力は259psから280psへ、最大トルクは36.7kg-mから39.7kg-mへ増強された。オプションで、8速オートマティックも選択できるようになっている。

試乗車も、その8速ATだった。ただし車重は、6速MTより20kg増える。

シフトレバーがDの位置へあるかぎり、ATは回転数を低めに保ちながら、素早くシフトアップ。3気筒エンジンからは、ややザラついたノイズが小さめに聞こえてくる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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