「V8」との永久の別れ マセラティ・ギブリ 334ウルティマをモデナで堪能 フオリセリエの別格内装

公開 : 2024.08.14 19:05

スーパースターのV8エンジン

ゆっくり運転していても、V8エンジンはスーパースター。素晴らしい美声は、車内の人より、車外の人へ良く届くけれど。トンネルに入ったら、窓を少し開きたい。

ターボチャージャーが生む圧力で、2000rpmから7000rpmまで、加速力は凄まじい。マニュアル・モードを選び、シフトパドルを弾けば、ZF社製の8速ATのギアを直接選べる。望み通りに回転数を引っ張り、豊かな響きを鑑賞できる。

マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)
マセラティギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)

MC20やグラントゥーリズモに載る、V6ネットウーノ・ユニットも泣きたくなるほど素晴らしい。とはいえ1960年代から、ギブリではV8エンジンが魅力の柱になってきた。

ギブリ 334ウルティマの英国価格は、ベースモデルから約5万ポンド(約1020万円)お高い、15万9625ポンド(約3256万円)。2気筒少ないが、アルファ・ロメオジュリア・クアドリフォリオの倍の金額だと考えると、高すぎるように思える。

ただし、価格上昇の理由の一部は、特別な仕上がりを手掛けるフオリセリエ部門によるもの。「会社内の小さな会社」だと主張されるこの部門は順調に成長しており、独自性を求める多くの顧客のモデルを「キュレーション」、監修している。

より大きなアイデアと予算を有する顧客には、「ビスポーク」として、専門的なデザインチームも参画。1年以上をかけて、唯一のマセラティへ仕上げてくれる。どちらも、ブランドへ大きな利益をもたらすことはいうまでもない。

フオリセリエが手掛ける印象的なインテリア

「フオリセリエはトップの中のトップ。ブランド自体と体験を向上させます。お客様から要望を伺い、数か月後にクルマをお届けするわけではありません。協力しながら、すべてがアイデアに合致するのか確認します」

「要望が厳しいお客様も多くいらっしゃいます。コラボレーションのような手段を取る理由です」。と、同部門を率いるダヴィデ・バルディーニ氏が説明する。

マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)
マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)

MC20 チェロ・オペラダルテが、彼らが手掛けた最も冒険的なモデル。贅沢な塗装が施され、製作には2年が費やされている。そのぶん、価格も桁違いに高い。

マセラティは、ビスポーク仕様を100台ほど提供してきた。ブランドの売り上げの10%に、フオリセリエ部門が関わっているという。モデナに新しい塗装ワークショップを準備中で、これが竣工すれば、さらに割合いは増えるはず。

「プロジェクトに限界はありません。あってはなりません。お客様の要望へお応えできないとしたら、われわれが改善すべきということです」。バルディーニが続ける。

クラシック・マセラティを、豪華にレストモッドする可能性もあるようだ。「将来的には、古い車両へ関わるかもしれません。生産が終了したモデルは、安全性や素材などを理由に、特にインテリアが複雑です。しかし、アイデアを練るのは面白いでしょう」

V8エンジンを搭載した、魅惑的なスタイリングで軽量なクラシック・マセラティは、きっと高い注目を集めるだろう。ギブリ 334ウルティマが彼らのワークショップへ戻る日も、いつか来るかもしれない。

マセラティ・ギブリ 334ウルティマ(欧州仕様)のスペック

英国価格:15万9625ポンド(約3256万円)
全長:4985mm
全幅:1945mm
全高:1485mm
最高速度:334km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:7.9km/L
CO2排出量:286g/km
車両重量:1969kg
パワートレイン:V型8気筒3799cc ツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:580ps/6750rpm
最大トルク:74.2kg-m/2250-5250rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブン・ドビー

    Stephen Dobie

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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