モデルYより安い新グレード 日産アリアへ英国試乗 価格競争力を強化 本来の魅力は変わらず

公開 : 2024.08.15 19:05

新グレードで価格競争力の強化を図った日産アリア シングルモーターで最高出力218ps 線形的で直感的なレスポンス 本来の魅力は変わらず EVへの乗換えを後押しすると英編集部は評価

廉価仕様で英国の価格競争力を強化

日産の量産バッテリーEVとして、リーフに次ぐ2番手を担うアリア。2022年の発売以来、厳しい生存競争にさらされている。フォルクスワーゲンID.4プジョーE-3008、ヒョンデアイオニック5など、ライバルは少なくない。

そこで同社が取った手段は、価格競争力を強化すること。英国仕様に、新しいグレードが設定された。

日産アリア 63KWH エンゲージ(英国仕様)
日産アリア 63KWH エンゲージ(英国仕様)

現在の英国で、アリアのトップグレードにあるのがエボルブ+。ツインモーターの最高出力は394ps、最大トルクは61.1kg-mと強力だが、お値段は約6万ポンド(約1152万円)。0-100km/h加速は5.1秒と鋭いものの、お高いことは否めない。

今回追加されたのは、その反対側にある廉価仕様で、英国価格は3万9645ポンド(約761万円)から。日産によれば、このエンゲージ・グレードの反応は上々らしく、既に新規契約の20%を占めているという。

エントリーグレードでも、装備は充実。LEDヘッドライトにヒーター内蔵ドアミラー、19インチ・ホイールなどが標準で備わる。ダッシュボード上に据えられる、12.3インチのタッチモニターとメーター用モニターも、上級グレードと変わらない。

ちなみにエボルブ+を選択すると、パノラミック・サンルーフにヘッドアップ・ディスプレイ、ボーズ社製の10スピーカー・ステレオなどが備わる。20インチ・アルミホイールとナッパ・レザーのインテリアも。

最高出力218ps 線形的で直感的なレスポンス

フロントシートが手動式になり、クロス張りになるのは、価格を抑えた結果だろう。それでも、インテリアの全体的な品質は高いまま。衝突被害軽減ブレーキなど、運転支援システムも充実している。

シートの座り心地は良好。ドア側のパネルも、肌触りはソフト。傷が付きやすいプラスティックが露出した部品は、足元付近にしか用いられていない。

日産アリア 63KWH エンゲージ(英国仕様)
日産アリア 63KWH エンゲージ(英国仕様)

パノラミック・サンルーフは装備されないが、車内は明るく開放的。身長が185cmくらいまでなら、車内空間に不満はなし。フロアがフラットだから、リアシートの中央に座っても足の置き場へ困ることもない。

駆動用バッテリーは、2種類ある容量の内の63kWhが載るが、航続距離は403kmと必要充分。これで足りない場合は、5000ポンド(約96万円)を追加することで、87kWhの大容量も選べる。

駆動用モーターはシングルだが、最高出力は218ps、最大トルクは30.4kg-mあり、普段使いに不足はない。車重1907kgの前輪駆動で、0-100km/h加速は7.5秒でこなせる。実際、高速道路への合流も、幹線道路での追い越しも余裕だ。

アクセルペダルの操作に対し、パワーが線形的で直感的に放出される点も強み。ここへのこだわりが甘いモデルも、競合には存在する。ただし、少し乱暴に右足を倒すと、フロントタイヤが鳴くことはある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サム・フィリップス

    Sam Phillips

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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