メルセデスAMG Cクラス 詳細データテスト 足りないナチュラルさ 動力性能のわりに洗練度は高い

公開 : 2024.08.10 20:25

気筒数を半減させつつ、モーターアシストを加えて車名にふさわしい動力性能を目指した新型C63。たしかに速いものの、重量は増え、メカニズムは複雑に。結果、ドライビングはナチュラルさの乏しいものとなってしまいました。

はじめに

長い間、メルセデスAMGといえばシンプルな猛獣のようなクルマだと思われてきた。どんなに進んだ技術が多数投入されても、結局行き着くところは単純なエモーションだ。V8エンジンが唸り、後輪が鳴き、ドライバーがはしゃぐ、といった具合に。

ところが、うるさいエンジンが社会的に肩身の狭いものとなり、エミッションの目標が厳しさを増し、ユーザーが日常使いでの利便性を重視するようになるにつれ、AMGは路線変更を求められるようになった。その大きな変化を体現しているのが、今回のC63S Eパフォーマンスだ。

テスト車:メルセデスAMG C63S Eパフォーマンス 4マチック+ナイトエディション・プレミアムプラス・エステート
テスト車:メルセデスAMG C63S Eパフォーマンス 4マチック+ナイトエディション・プレミアムプラス・エステート    MAX EDLESTON

カリスマ的なV8で後輪を駆動し、タイヤスモークをあげるようなドライブトレインと決別し、搭載されたエンジンは4気筒。そして、PHEVシステムと4WDを採用した新時代のC63が誕生した。

このクルマの登場に際し、AMGが語ったのは、生々しいパフォーマンスと、短距離ながら電動走行できる便利さを両立した、ということだった。

当初の試乗では、あまりいい印象を受けなかった。パフォーマンスはメニューやモードの層に埋もれ、パッケージはむしろ魅力のないものに感じられたのだ。それから英国への正規導入まで1年がかかった。このきわめて複雑化したクルマの第一印象が誤解だったのか、長い冷却期間を経て改めて乗れば、見落としていた才覚に気づけるのか、それを確かめる機会がようやく巡ってきた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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