メルセデスAMG Cクラス 詳細データテスト 足りないナチュラルさ 動力性能のわりに洗練度は高い

公開 : 2024.08.10 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

なにはともあれ、このクルマに用いられたエンジニアリングは賞賛に値する。

C63は、GT63S Eパフォーマンスと同じハイブリッドシステムを搭載する。ただし、エンジンはV8ではなく直4だ。いわゆるP3システムに分類されるが、Pはパラレルハイブリッド、3は電気モーターがギアボックスとディファレンシャルの間にあることを示す。レンジエクステンダーではない、本格ハイブリッドとでもいうべきものだ。

ボウリングのボールみたいなサイズのギャレット製ターボは、驚異的なメカだ。400Vハイブリッドシステムで駆動する厚さ4cmの電気モーターが、排気側と吸気側の間にあるシャフトに接続され、排気が十分に流れてくる前にタービンを回す。
ボウリングのボールみたいなサイズのギャレット製ターボは、驚異的なメカだ。400Vハイブリッドシステムで駆動する厚さ4cmの電気モーターが、排気側と吸気側の間にあるシャフトに接続され、排気が十分に流れてくる前にタービンを回す。    MAX EDLESTON

しかしながら、その分類の型どおりならAMGの湿式クラッチ9速ATとリアディファレンシャルの間に置かれているはずのモーターは、ドライブユニットとしてリアアクスル上に設置されている。これは204ps
の電気モーターに6.1kWhのハイパフォーマンス・リチウムイオンバッテリー、インバーターとコントロールユニット、2速ギアボックスを組み合わせたものだ。

このアレンジメントはリアディファレンシャルとして機能するだけでなく、リアのプロペラシャフトも駆動。トランスファーケースを経由し、四輪へ駆動力を送ることができる。

ハイパフォーマンスと銘打ったバッテリーは、絶対的な容量よりも、充放電の速さに重きを置いて開発された。そのため充電容量は、C300eの25.4kWhを大きく下回る。その代わり、連続出力のピークは150kWと、実用型バッテリーの70kWに対して倍以上。ということは、10秒全開にすると、108psを失うことになる。なお、エネルギー回生のキャパシティは100kWだ。

バッテリーは、各セルごとに液冷される。14Lのクーラントを循環させ、最適な温度を保つのだ。ハイブリッド用バッテリーは大多数が空冷式か、さもなければパック単位での冷却システムを備えるが、そのせいで高負荷時にはオーバーヒートすることもある。

バッテリーを使い切ったら走りがモタモタしてしまうPHEVもあるが、これはそういうものではない。プラグイン充電は、ベストな燃費を実現するためであって、パフォーマンスを高めることが絶対的な目的だとは言い難い。

内燃エンジンは、世界最強の量産4気筒を採用する。排気量比出力は239ps/Lで、これはフェラーリ296GTBのV6がマークする221ps/Lを凌ぐ。

400V電気系の貢献も小さくない。大径ターボには電気モーターが組み付けられ、排気が十分に送り込まれる前からタービンを回すことで、ブーストの掛かりはじめを引き下げ、ターボラグを減らす。この高電圧回路にはベルト駆動式スターター・ジェネレーターも装備し、補器類の電力を賄う。

こうしてテクノロジーを満載したことで、比較的コンパクトなワゴンボディの重量は実測2217kgにも達した。参考までに、BMW M5CSは1940kgだった。

この重量を御するため、AMGはシャシーにもさまざまな技術を盛り込んだ。そのせいで、さらに重量が増したのは疑うべくもないのだが。4WDはフル可変式で、ドリフトモードでは前輪の駆動系をカットすることも可能だ。

サスペンションは、通常のCクラスとは異なるもの。操舵系には可変レシオのステアリングラックと、最大2.5°転舵する後輪操舵が加わる。ステアリングナックルやスプリングコントロールアーム上のサスペンションジョイントはジオメトリーが変更され、ホイールベースは10mm伸びている。

AMGライドコントロールことアダプティブダンパーは標準装備。C63には、リモートリザーバーユニットと、伸びと縮みの両側を分割した電子制御バルブが備わる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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