初代BMW 5シリーズに匹敵! トライアンフ・スタッグ・サルーン/エステート(2) マニア間の伝説

公開 : 2024.08.25 17:46

V8エンジンのパワーと、ステーションワゴンの実用性を融合したアトランティック・ガレージ しかしトライアンフの不満を買い融資はストップ マニア間で崇められる希少車を英編集部がご紹介

V8仕様はマニア間で伝説的な存在へ

ボディシェルの提供が止まってもデル・ラインズ氏は諦めず、さらに26台の既存車両をコンバージョン。2シーター・クーペのトライアンフTR7が発売されると、ドロマイト・スプライト用のV8エンジンへ換装し、トライアンフ側を苛立たせた。

アトランティック・ガレージは、1985年に商用バンのレンタル事業へシフトし、その8年後に廃業。創業者のラインズも、2023年9月にこの世を去っている。

トライアンフ・スタッグ・エステート(1970〜1976年/アトランティック・ガレージ仕様/英国仕様)
トライアンフ・スタッグ・エステート(1970〜1976年/アトランティック・ガレージ仕様/英国仕様)

少数が作られたスタッグ・エステートとサルーンは、マニア間で伝説的な存在へ変化。現在では、トライアンフ2000や2.5 PIの頂点を飾る特別な存在として、別格扱いを受けるようになった。

タータン・レッドに塗られたデモ車両は、ラインズの手元に長くはいなかった。1年後には、スコットランドへ住む人物へ売却され、トランスミッションはマニュアルからオートマティックへ置き換えられた。

1979年にヘッドガスケットが吹き飛び、そのままガレージへ。2000年にオーナーが亡くなるまで放置され、スペイン在住のトライアンフ・マニアが購入。ラインズへ連絡を取りレストアを依頼するものの、債権者が登場し、思うようには進まなかったらしい。

2009年に意志を継いだのが、現在のオーナーでもあるアラン・チャタートン氏。完全なレストアを決意するが、過去の差し押さえでエンジンとAT、ホイール、排気系統を失った状態だった。

彼は5年をかけて部品を収集し、当時の姿が復元された。オリジナルのナンバープレートも、再び与えることが叶った。

状態が大きく異なるエステートとサルーン

対してラインズの友人、マイク・フーパー氏のために作られたミモザ・イエローのスタッグ・サルーンは、現在までに32万km以上も距離を重ねている。JNY 590Nのナンバーのまま、大切に維持されてきた。

フーパーは、11年間所有。晩年には、買い物の移動手段になっていたらしい。その後は、現在のオーナーであるアンディ・ロバーツ氏が購入。1991年に大きなレストアを受けているが、それ以外は普段使いのクルマとして走り込まれている。

トライアンフ・スタッグ・エステート(1970〜1976年/アトランティック・ガレージ仕様/英国仕様)
トライアンフ・スタッグ・エステート(1970〜1976年/アトランティック・ガレージ仕様/英国仕様)

トライアンフのオーナーズクラブが開催するチャリティー・イベント、クラブ・トライアンフ・ラウンドブリテン・リライアビリティランにも、8回出場。少しくたびれたボディが、走行距離の長さを物語る。

結果として、エステートとサルーンでは状態が異なり、運転体験もだいぶ違う。スタッグ用を150mmほど延長した、同じツイン・マフラーが組まれているが、アイドリング時の排気音からはっきり違う。

どちらもV8エンジンらしいドロドロとした唸りだが、サルーンの方が重厚。エステートは比較すると静かで、ハードな金属的な響きが放たれる。発進させると、さらに違いは顕著に。ロバーツは、経年劣化でマフラーのバッフルが失われたのではないかと話す。

トランスミッションは、リビルドされたばかりのエステートではタイト。サルーンのユニットは、少し緩い感じがする。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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