初代BMW 5シリーズに匹敵! トライアンフ・スタッグ・サルーン/エステート(2) マニア間の伝説

公開 : 2024.08.25 17:46

当時唯一といえたミドルクラスの高性能ワゴン

3.0L V8エンジンを積むが、2台ともオリジナルの2.5 PIより大幅に速いわけではない。最高出力の差は15psほどで、0-96km/h加速を1.0秒縮めたくらい。それでも、直列6気筒エンジンより滑らかに回り、サウンドも良い。高回転域でのパワー感も勝る。

ラインズが手掛けたサスペンションのおかげで、操縦性は素晴らしい。もとの2.5 PIも優れていたが、ステアリングの精度も向上し、コーナリング時の安心感が高い。控え目なパワーアシストを介し、このクラスとしては最高水準のフィードバックがある。

トライアンフ・スタッグ・サルーン(1970〜1976年/アトランティック・ガレージ仕様/英国仕様)
トライアンフ・スタッグ・サルーン(1970〜1976年/アトランティック・ガレージ仕様/英国仕様)

エステートの方が、コーナーでのボディロールは大きめ。現代的なモデルと変わらないペースで、カーブを巡っていける。車重が軽いサルーンは粘り強く路面を掴み、ひときわスポーティだ。

たくましいV8エンジンと確かなグリップ力で、高速域の印象も2.5 PIを凌駕する。ラインズは、正式な量産モデルになれば、1万台は売れるのではないかと考えていた。実際に体験してみると、それは過大評価ではなかったと理解できる。

1977年にメルセデス・ベンツ280 TEが登場するまで、ミドルクラスの高性能ワゴンは存在しなかった。結果として先手を切った、そのS123型は、ブランドを代表するようなモデルへ成長した。

有能なスポーツサルーン 初代5シリーズに匹敵

とはいえ、筆者がより強く感銘を受けたのは、スタッグ・サルーン。ラインズは、エステートの方が気に入っていたようだが、現在のトライアンフ・マニアで一層の伝説的な扱いを受けているのも、サルーンの方だ。

軽量なシャシーに静かなキャビン、有能なV8エンジンが融合し、唸るほどの訴求力がある。当時のブリティッシュ・レイランドは、ローバーP6というV8エンジンのサルーンを擁し、ライバルとしてジャガーも存在し、量産化されなかった理由もわかるが。

レッドのトライアンフ・スタッグ・エステートと、イエローのトライアンフ・スタッグ・サルーン
レッドのトライアンフ・スタッグ・エステートと、イエローのトライアンフ・スタッグ・サルーン

1970年代として、有能なスポーツサルーンに仕上がっていることは間違いない。同時期のジャガーより軽く機敏で、初代BMW 5シリーズに匹敵したといっていい。この2台が2024年まで生き抜いたことが、とても喜ばしい。

エステートは、さらに2台が残っていることが判明している。1台はオランダ(ネザーランド)で、もう1台はグレートブリテン島にあるという。意外と気づかれていないアトランティック・ガレージ仕様も、ひっそり生存するのかもしれない。

シャシー番号にAGの頭文字が振られていないか、トライアンフ2000や2.5 PIのオーナーは、1度確認されてみてはいかがだろう。実はマニア垂涎のコレクターズアイテムだった、という可能性もゼロではない。

協力:マイク・メンヘニット氏、トライアンフ2000/2500/2.5レジスター、ハザリーナー・ホテル&スパ

トライアンフ・スタッグ・サルーン/エステート(1970〜1976年/英国仕様)のスペック

英国価格:3000ポンド(新車時)/5万ポンド(約950万円/現在)以下
生産数:25台+26台(コンバージョン)
全長:4445mm
全幅:1651mm
全高:1422mm
最高速度:194km/h
0-96km/h加速:8.9秒
燃費:6.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1250kg
パワートレイン:V型8気筒2997cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:147ps/5500rpm
最大トルク:23.4kg-m/3500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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