自他認める「公道を走れるレーシングカー」 ジネッタG56 GTRへ試乗 6.2L V8をフロントミド!

公開 : 2024.08.22 19:05

モータースポーツで世界的な評価を集めるジネッタ 公道モデルの最新作がG56 GTR 脳裏に焼き付けられる野性的な響き 滑らかな路面で顕になる潜在能力の高さ 英編集部が評価

脳裏に焼き付けられる野性的な響き

2009年のこと、ピンク・フロイドのメンバーだったニック・メイスン氏が所有するマクラーレンF1 GTRへ、AUTOCARの元編集者、スティーブ・サトクリフ氏が試乗した。その様子はユーチューブで見れるが、再生数は120万回以上に達している。

この中で、シーケンシャルMTを豪快にシフトダウンする瞬間がある。6.1L V12エンジンの凄まじいレスポンスは、鳥肌が立つほどだ。

ジネッタG56 GTR(英国仕様)
ジネッタG56 GTR(英国仕様)

そんな記憶が蘇った理由は、筆者が乗るブルーのクーペが、似た音響体験を生み出すから。F1を凌駕はしないが、脳裏に焼き付けられる野性的な響きだ。

グレートブリテン島の真ん中、リーズの街から少し離れたところに、ジネッタ・カーズの拠点がある。モータースポーツ・シーンでの活躍を考えれば、G56 GTRの本性にも納得できる。

レーシングドライバーのランド・ノリス氏は、ジネッタ・ジュニア選手権で腕を磨いた。ル・マン24時間レースに向けて、LMP1仕様のG60-LT-P1もジネッタは開発している。トヨタのプロトタイプへ対抗するために。

同社の生産プロセスで印象的なのが、自社完結型なこと。溶接用ワークショップに、コンポジット構造を焼成するオートクレーブと呼ばれる巨大な圧力釜、エンジンの組み立てエリアなどが、工場内に点在している。

組み立て待ちのトランスミッションやサスペンション、ワイヤーハーネス、アルミの削り出し部品なども、整然と並んでいる。これらが一体となり、見事なレーシングカーが誕生する。公道走行が許された、限られたモデルも。

ワイルド・スピードに出てきそうな姿

遡ること2012年、ジネッタは公道走行できるG40Rをリリースしている。マツダMX-5(ロードスター)用のドライブトレインを流用した、車重800kgのクーペだ。

同時期に、ル・マン・マシンとは別物のG60も作られた。これは、フォードのV6エンジンをミドシップした、カーボンファイバー製のクーペ。ABSやトラクション・コントロール、パワステ、ブレーキ・サーボが備わらない、生々しく楽しいジネッタだった。

ジネッタG56 GTR(英国仕様)
ジネッタG56 GTR(英国仕様)

それ以降、同社はモータースポーツへ集中。ジネッタ・アカデミーを立ち上げ、世界最高水準のアマチュア・モータースポーツ・シリーズとして成長させてきた。かくして、10年以上ぶりのナンバー付き最新作が、G56 GTRだ。

ボディはカーボン製。ボンネットを固定する、レーシングラッチがタダモノではない感を醸し出す。エアジャッキ用のポートも見える。ワイルド・スピードに出てきそうな姿だが、プロポーションは美しい。

フロントスプリッターは路面ギリギリに低く、リアウイングとバランスを取っている。エグゾーストパイプはボディサイドを迂回し、後方へ導かれる。シャシー底面は、完全にフラットだという。

ドアを開くと、チューブラーフレームを覆った、カーボン製サイドシルが出迎えてくれる。シートはバケットだが、表面がキルティング加工でイイ感じ。

ドライバー正面のモーテック社製LCDパネルは、レーシングカーのまま。ロールケージがコクピットを包み、ピットレーン用のスピードリミッター・ボタンも残る。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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