ヒョンデ・アイオニック5N 詳細データテスト ドライバーズカーEV誕生 重さを忘れるハンドリング

公開 : 2024.08.17 20:25

走り ★★★★★★★★★★

アイオニック5Nは、とにかく速い。事実、家族全員と荷物を載せることができ、キャンプ場でコーヒーマシンを使うこともできるばかりか、ほかのEVの充電さえできる給電機能も備えるクルマとしては、とてつもない速さだ。

プルービンググラウンドでのテストでは、3.5秒で97km/h、7.8秒で161km/hに達した。フェラーリプロサングエ並みの性能をより手頃に味わえるトラディッショナルなスーパーSUV、BMW X6Mコンペティションとほぼ同等だ。

スーパーSUVに匹敵する動力性能はもちろん、仮想8段変速の出来のよさにより、ICE車のようなスポーツドライビングも楽しめる。
スーパーSUVに匹敵する動力性能はもちろん、仮想8段変速の出来のよさにより、ICE車のようなスポーツドライビングも楽しめる。    JACK HARRISON

とはいえ、直線の速さがすべてではない。モーター出力はフロントが226ps、リアが383ps。ステアリングホイールのNグリンブーストボタンを押すと、10秒間のみ238ps/412psにアップできるが、通常の走行モードでもコーナリングスピードはセンセーショナルだ。

それだけなら、ほかのハイパフォーマンスEVと同じだが、ヒョンデにはN e−シフトという新機軸がある。動力伝達を操作して、8速の有段ギアのように装うシステムで、シフトのクオリティはDCTのようだ。エンジンブレーキとシフトアップの活発さはドライバーが調整でき、シフトダウンでは回転合わせを行う。レッドラインは8000rpmと、十分すぎるほど高い。

この手のアイデアが未完成のまま実用化され、説得力のないデバイスになることはよくあるが、ヒョンデはそれを杞憂に終わらせてくれた。推進力のデリバリーは各段ごとの差が十分に明確で、仮想ギア比も直観的な設定だ。2速でだいたい100km/h、4速で190km/hちょっとに達する。

EVで各ギアごとの加速性能を計測できたのは、これがはじめてだ。ファンタジーではあるのだが、車内に8つ、車外にふたつのスピーカーから発する合成エキゾーストノートがさらに錯覚を起こさせる。加速タイムそのものは、アストンマーティンDBX707とほぼ同じだった。

スロットルレスポンスは3段階、回生ブレーキは4段階の調整が可能で、もちろん、ほかのEVと同じように運転することもできる。状況によってはいつでもすぐに、自然なシングルスピードモードでうれしいくらい速く走る。そこから暴力的な4気筒ターボのような別人格へ切り替えるには、ステアリングホイールのN−カスタムボタンを押すだけだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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