BMWのCEO「内燃機関の全面禁止は間違っている」 eフューエル普及を促進するべき

公開 : 2024.08.15 18:05

BMWのオリバー・ジプセCEOは、2035年に内燃機関搭載車の新車販売を禁止するEUの計画を「間違ったアプローチ」と批判した。現実的な脱炭素化としてカーボンニュートラル燃料の普及促進を求めている。

現実的な脱炭素化アプローチ

BMWのオリバー・ジプセ最高経営責任者(CEO)は、2035年に内燃機関を搭載する新車の販売を禁止するという欧州連合(EU)の計画は「間違ったアプローチ」であるとし、合成燃料の普及を加速するよう求めた。

現在の法的枠組みでは、EU圏内で2035年にゼロ・エミッション車以外の新車販売を禁止する。しかし、内燃機関車も「eフューエル」のようなカーボンニュートラル燃料のみで走行する限り、販売継続が認められる。

BMWは電動化を進めながらも、内燃機関にこだわり続けている。
BMWは電動化を進めながらも、内燃機関にこだわり続けている。

ジプセCEOは、EUの執行機関である欧州委員会は2035年までにeフューエルの実用化を加速させなければならない、と述べた。そうでなければ、この法案は「裏口から意図的に内燃機関を禁止するものになる」という。

これは「偽りの解決策」だとして、「2035年に内燃機関を(全面的に)禁止するのは間違ったアプローチだ」と指摘した。

eフューエルの入手方法や数量は限られており、普及を大きく阻害している。eフューエルの製造には、再生可能電力を使って水を電気分解して作る「グリーン水素」が必要なため、膨大なエネルギーを消費する。

国際エネルギー機関(IEA)の2019年の報告書によると、現在の産業用水素生産量のすべてを電力で賄うと仮定すると、3600TWhの電力需要が生じる。これは、2022年のEUの全エネルギー生産量よりも1000TWh近く多い。eフューエル製造が本格化すれば、さらに多くの水素、すなわち電力が必要となる。

この大量の電力を、バッテリー電気自動車(BEV)に直接供給することもできる。

しかし、eフューエルは、内燃機関を搭載した既存の自動車を脱炭素化するための現実的な道として、またスポーツカーや大型トラックのようなBEVに適さない車両のための解決策として見られている。

ポルシェは、2022年12月にチリ工場の操業を開始したeフューエル開発会社、HIFに多額の投資を行っている。同工場では現在、ポルシェのモービル1スーパーカップ・レースシリーズ用にeフューエルを製造している。

フェラーリもカーボンニュートラル燃料を支持している。ベネデット・ヴィーニャCEOは先月、「内燃機関車にはまだ有効な道がある」と述べ、持続可能な燃料開発の重要性を指摘した。

F1も2026年にカーボンニュートラル燃料への切り替えを行い、新たな技術レギュレーションを導入する予定だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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