アメリカを支えた「コミカル」な小型トラック フォードF-1(1) 市場を変えた一大発明

公開 : 2024.08.31 17:45

車両総重量別にF-1からF-8まで8種類

アメリカ・テキサス州やニュージャージー州、カリフォルニア州、ミズーリ州、ミシガン州など、フォードは16か所の工場でFシリーズを量産。車両総重量別にF-1からF-8まで8種類が設けられ、多様なニーズを受け止めた。

F-1からF-3までは、一般的なピックアップトラックやパネルバン。主力となったF-1のホイールベースは114インチ(約2896mm)で、F-2とF-3の荷台は堅牢に作られ、約244mm長い。今回ご登場願ったFシリーズは、テキサス州生まれのF-1だ。

フォードF-1(初代/1947〜1952年/北米仕様)
フォードF-1(初代/1947〜1952年/北米仕様)

F-4以上は、通常以上にタフな利用が前提。F-5とF-6は架装を前提としたシャシーで、トラックやバスのボディが載せられた。F-7とF-8は「ビッグジョブ」。車両総重量が1万7000lbから2万2000lb(約7711kgから9979kg)までの、大型車両だ。

後期型には、オーバーヘッドバルブのリンカーン社製V8エンジンも登場。147psから157psの最高出力が与えられた。

1942年から提供されていた前身モデル、フォード・ピックアップよりボディはワイド。キャビンは頭上空間にも余裕があった。ドアの位置は75mm前方にあり、広い荷台も実現していた。

トランスミッションは、3速のライトデューティ(軽負荷)とヘビーデューティ(高負荷)のほか、オーバードライブの有無を選べる4速を用意。オプションで、マーモン・ヘリントン社製の四輪駆動も選択できた。

アメリカ人が特別な気持ちを抱く初代

シートは横に長いベンチタイプ。灰皿と運転席側のサンバイザー、送風位置を選べるベンチレーションなど、歴代の商用車以上の快適性を実現していた。ヒーターとフロントガラス・ウオッシャー、助手席側のワイパーやサンバイザーは、オプションだったが。

ステアリングホイールは水平に起こされ、ドライバーの近い位置へ配置。エンジンなどの熱を遮るため、フロアにはゴムマットが敷かれた。広い前方視界を得るため、フロントとリアのガラス面積は拡大された。

フォードF-1(初代/1947〜1952年/北米仕様)
フォードF-1(初代/1947〜1952年/北米仕様)

フォードは、キャビンの居心地に時間と費用を割いた。当時で100万ドルの開発予算を投じたと、主張されている。

少なくないアメリカ人が、初代Fシリーズには特別な気持ちを抱くはず。アメリカ大陸に点在する、1950年代の田舎町を彷彿とさせるクルマとして、これ以上にぴったりな例を思い浮かべるのは難しい。

それでも、モデルチェンジ間際の1952年式でも70年以上が経過している。新車で購入したというオーナーの多くは、既にこの世を去っていると考えられる。

グレートブリテン島では、米軍基地以外で見かける機会は非常に少なかった。ガソリン価格が高く、燃費が6.0km/L程度の大きなトラックへ、興味を示す人も少なかった。オーストラリアには、右ハンドル車が一定数上陸しているが。

この続きは、フォードF-1(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フォードF-1の前後関係

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