NO Fシリーズ NO ライフ! フォードF-1(2) ピックアップトラックの起源 アメリカの国民車

公開 : 2024.08.31 17:46

北米で最多販売のクルマ、トップ3はピックアップ 嗜好の起源にある初代Fシリーズ トルクフルで洗練されたフラットヘッドV8 驚くほど鋭いアクセルレスポンス 英編集部が魅力をご紹介

少し場違いな雰囲気を漂わせるFシリーズ

2024年の英国で、フォードFシリーズは少し場違いな雰囲気を漂わせる。アメリカ中部のトウモロコシ畑が、良く似合うだろう。深夜の道を走っていると、UFOの強烈な光で運転手が呆気に取られるような、B級映画のワンシーンも浮かんでくる。

今回のクルマは、約36万台が生産された1950年式の1台で、ステップサイドの0.5t仕様。インターネットの普及で、グレートブリテン島へ並行輸入されるクラシックな商用車は、増える傾向にあるようだ。

フォードF-1(初代/1947〜1952年/北米仕様)
フォードF-1(初代/1947〜1952年/北米仕様)

20年ほど前にアメリカでレストアを受けており、宣伝に使う目的でロンドンへ運ばれてきた。2008年にその役目を終え、現在のオーナーが引き取っている。

垂直に立ち上がったシンプルなフロントグリルと、その横に並ぶ丸いヘッドライトが、1950年式の特長。ボルボPV444にも雰囲気が似ている。テールゲートには、筆記体でFordと誇らしげに刻まれている。

後期型では、太い水平のバーに3本の「歯」が付いた、フロントグリルに変更された。こちらの方が、見覚えのある方は多いだろう。

乾燥した地域で生まれ、乗られてきたためか、ボディパネルは工場出荷時のまま。派手なカスタムを好む、ホッドロッド・ファンのベース車両になることが多く、オリジナル状態を保っている例は珍しい。スチールホイールが、4本のボルトで固定されている。

トルクフルで洗練されたフラットヘッドV8

ボディのクロームメッキは最小限。フロントバンパーは、前方から突き出たシャシーレールへ固定された、フラットなスチール板だ。荷台にも、殆ど傷は見られない。建設業者や農家、スクラップ業者によって、道具として扱われてきたような形跡はない。

ボンネット横に切られた、左側のエアアウトレットへ隠れたラッチを解除すると、大きなシェルが持ち上がる。ラジエターは巨大。フラットヘッドのフォード・ユニットは、発熱が大きい。シリンダーヘッドとエグゾースト系の熱伝導が大きいためだ。

フォードF-1(初代/1947〜1952年/北米仕様)
フォードF-1(初代/1947〜1952年/北米仕様)

圧縮比は6.8:1で、最高出力は101ps/3800rpm。排気量は239cu.in(約3920cc)あり、トルクフルで洗練されたユニットといえる。クランクシャフトを支えるメインベアリングは3枚で、ブロックは鋳造。製造コストを抑えるよう、設計されている。

このユニットのベースは、1932年に提供が始まった8RT。ヘンリー・フォード氏が存命の間に生み出された注目すべき技術として、最後の1つに当たる。しかし、Fシリーズの量産ラインの完成を目にすることは叶わなかった。

大きなエンジンルームの低い位置に収まり、小さなキャブレターと巨大なエアクリーナー・ボックスが積み重なっている。ボルトが並ぶバルブカバーは、フラットヘッドの特徴の1つ。キャブレターの直後で、機械式の燃料ポンプが回る。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フォードF-1の前後関係

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