【アロンソも購入!】 アストン マーティン・ビスポークが手掛けた38台の限定車

公開 : 2024.08.15 17:45  更新 : 2024.08.16 19:07

アストン マーティン・ヴァリアントが日本でも公開されました。このクルマはアストン マーティンのビスポークサービス、Q by Aston Martinが開発した38台限定のクルマで、そのベースは同じくQ by Aston Martinが手掛けたヴァラーです。

F1パイロット、アロンソからの挑戦状

ことの発端はアストン マーティン・アラムコ・フォーミュラ1チームのドライバーであるフェルナンド・アロンソ選手の「軽量で過激さを増した、レーシングカーの要素を取り入れたヴァラーが欲しい」という個人的な依頼がきっかけだった。

それをアジア太平洋地域のQスペシャルプロジェクトのトップ、サム・ベネッツさんは、「アロンソ選手からの挑戦状」と表現する。

世界38台の限定車、アストン マーティン・ヴァリアントが日本上陸
世界38台の限定車、アストン マーティン・ヴァリアントが日本上陸    田中秀宣

ヴァラーは、アストン マーティン創立110周年を記念し、110台限定でつくられたクルマで、5.2リッターV12ツインターボエンジンと6速マニュアルトランスミッションを組み合わせた後輪駆動のスペシャルエディションだ。

V8ヴァンテージや1980年に登場したヴァンテージ・ベースのル・マン出場車「RHAM/1マンチャー」にインスピレーションを得て開発されたこのクルマは、715ps/76.8kg-mのパワーを発生するドライバーズカーである。

それをベースにヴァリアントは生まれた。その違いについてサムさんは、「ヴァラーを公道走行90%、トラック走行10%をターゲットに開発したとすれば、ヴァリアントは、90%トラック走行、10%が公道走行にフォーカスして開発したもの」とコメント。

そこから、ボディワークをはじめ重量やパワー、サスペンションなどを決定していったので、よりマンチャーのイメージに近づいたともいえる。

ボディもヴァラーとは変えて、約95kg軽量化

まず、エンジンの基本は変わらないものの、最高出力は715psから745psにパワーアップ。

ボディは全てカーボンファイバー製で、ルーフとドア周りを除いて、Aピラーから後ろは一体成型とされ、トランクの開口部も廃された。

こちらはベースとなったアストン マーティン・ヴァラー
こちらはベースとなったアストン マーティン・ヴァラー    アストン マーティン

そのかわりにリアウインドウあたりにヒンジ開閉のリアスクリーンパネルが設けられ、ふたつのヘルメットとレーシングブーツが収納できるようになっている。また剛性の観点からフロントグリルも取り外せない一体構造体とされた。

さらに、F1の知見から空力特性も見直され、フロントスプリッターや固定式の大型リアウイング、そしてサイドスカートなどを装備し、大幅にダウンフォースを向上させている。

もちろん軽量化も抜かりない。3Dプリンター製作のリアサブフレームを採用することで、剛性を下げることなく3kgの重量を削減。

同時にマグネシウム製トルクチューブによって車両中央部の質量を8.6kg削減している。フロント275/35、リア325/30のタイヤを装着する21インチの軽量マグネシウムホイールは、ステアリングレスポンスとホイールのコントロール性が向上し、バネ下重量も14kg削減。さらに、モータースポーツ仕様のリチウムイオンバッテリーによって11.5kgの削減も実現でき、そのほかのものと合わせてトータル95kgほどの軽量化に成功している。

サスペンションもヴァラーから見直され、マルチマティック社製アダプティブ・スプール・バルブ(ASV)ダンパーが装着された。通常のダンパーはシムの穴にオイルが流れることによって、その抵抗でダンピングを調整する仕組みだ。

一方ASVは、32個あるこの穴にシャッターを設け、オイルの流れをコントロール。結果として伸び側と縮み側を個別に調整することを可能としたのだ。これはすべて電子制御にて6ミリ秒で調整。同時にドライバーが手元で3段階の調整も可能としている。

また、ドライブモードもSport、Sport+、Trackが設けられ、ドライバーの好みに応じてエンジンパフォーマンスがコントロールできる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 撮影

    田中秀宣

    写真が好きで、車が好きで、こんな仕事をやっています。
    趣味車は89年式デルタ・インテグラーレ。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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