【担当者は超エンスー!】 アストン マーティン・ヴァリアントを深掘り

公開 : 2024.08.16 17:45  更新 : 2024.08.20 19:45

ドライバーとクルマがダイレクトに繋がっている

ヴァリアントの開発においては、数字以上にフィーリングが重視された。それはクルマとドライバーがダイレクトに繋がっているというもので、開発の発端となったフェルナンド・アロンソ選手が最も重視したことでもある。

クルマのひとつひとつの挙動、過激なフィーリングを、ドライバーが学びながら御していくイメージといっていい。

アロンソ選手がグッドウッドでドライブしたヴァリアント
アロンソ選手がグッドウッドでドライブしたヴァリアント    アストン マーティン

DB12はどんな条件でも安心して運転できます。例えば私の母でも運転できますよね。なぜなら電子デバイスが制御しているから」とサムさん。ヴァリアントは「ドライバーがちょっと怖いなと思ってしまうような感じ。でもそれでいいんです」という。

例えば、「トラクションコントロールやABSはついていますが、全てオフに出来ます。その状態で745psを後輪駆動のマニュアルで運転するんです。ね、勇気がいるでしょう(笑)。そこで失敗したら、それはドライバーの頭脳かつま先が問題なんです」とのことだった。

もうひとつ、38台という限定台数が気になった。先にも紹介したヴァラーはアストン マーティン110周年ということで、110台限定だったからだ。

すると案の定、38にも意味があり、「マンチャーのVINコードに基づいています」とサムさん。同時に、このクルマを購入するであろうエンスージアストがグローバルでそのくらいだったことも理由とのことだった。

サムさんとヴァリアントのマニュアルトランスミッションの話をしたときに、自身も通勤以外のクルマは全てマニュアルだと発言していた。

そこで何を持っているのかを聞いてみたところ、「BMW M3(E46)にスーパーチャージャーを付けたものや、ホンダシビック・タイプR(EK9、EP3)、プジョー306ラリー、106ラリー、ゴルフGTI(2世代目)、レースもやっているので1961年のミニクーパーSもあります。ほかにFDのRX-7、R32スカイラインGTR、ホンダS2000にはターボチャージャーも付けましたが、これはちょっとやりすぎちゃいました」と教えてくれた。

いやはや、相当なエンスージアストである。そんな人がいるからこそ、フィーリングを重視して、クルマを操ることにこだわったヴァリアントが生まれたのだろう。そして、そのフィーリングはきっとドライバーを虜にするに違いないと確信した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 撮影

    田中秀宣

    写真が好きで、車が好きで、こんな仕事をやっています。
    趣味車は89年式デルタ・インテグラーレ。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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