レンジローバー・スポーツ x ポルシェ・カイエン 高級SUVはブランド成長の「金の卵」 比較試乗(1)

公開 : 2024.08.24 09:45

スポーツSUV市場を牽引するレンジローバー・スポーツとポルシェ・カイエン 多様性と高い目標の達成が求められる2台 刺激的なスポーツSUVは? 英国編集部が比較試乗

斬新で説得力ある新カテゴリーだった

1990年代の後半、ポルシェカイエンの構想が練られるさなか、まったく異なるモデル名が検討されていたことをご記憶の方はいらっしゃるだろうか。それは、「スポーティリティ」だ。

ブレインストーミングには、大変なエネルギーが割かれたことだろう。異なるモデル・アイデンティティで推し進められていたら、今の自動車業界はどう変化していたのか、興味を抱かずにはいられない。

ブラックのランドローバー・レンジローバー・スポーツ SV エディションワンと、グレーのポルシェ・カイエン E-ハイブリッド・クーペ GTパッケージ
ブラックのランドローバーレンジローバー・スポーツ SV エディションワンと、グレーのポルシェ・カイエン E-ハイブリッド・クーペ GTパッケージ

ポルシェは、巨大な影響力を掴んでいなかった可能性がある。21世紀初頭に、潤沢な利益を得ることも難しかったかもしれない。ドイツ・シュトゥットガルトで能力を発揮する技術者たちは、賢明な選択を重ね、悲惨な結果を見事に回避した。

そして、現在の自動車市場はSUV花盛り。われわれがポルシェ・カイエン・ターボと対面してから20年。後を追うように、レンジローバー・ストーマー・コンセプトをランドローバーが公開してからも、同じくらいの年月が経つ。

その頃、全長が5m近くあり、車重が2tを超えるスポーツSUVは、斬新で説得力のある新カテゴリーといえた。見た目だけでなく、走りもスポーツサルーンに接近していた。

カイエンとレンジローバー・スポーツは進化を重ね、金の卵のように母体を成長させてきた。ポルシェは間違いなく、世界最高の自動車ブランドの1つになった。ランドローバーも同様に、ブランドイメージを高め続けている。

高い目標を掲げ、達成することが求められる

そして、速いだけでは不充分とみなされるようにもなった。物理学へ反するような能力への驚きは薄れ、更に上にある多様性が求められている。というわけで今回は、最新スポーツSUVの現在地を、比較試乗で確かめてみたい。

21世紀が始まって以来、高級SUV市場は爆発的に拡大した。10万ポンド(約1900万円)以上のモデルは珍しくなく、500馬力は当たり前。ランドローバーやポルシェ以上に誘引力の強いブランドが、富裕層の心を惹き付けている。

ポルシェ・カイエン E-ハイブリッド・クーペ GTパッケージ(英国仕様)
ポルシェ・カイエン E-ハイブリッド・クーペ GTパッケージ(英国仕様)

臨戦態勢を整えるべく、最新世代のL461型レンジローバー・スポーツは、2022年に登場。3代目カイエンも、2023年にビッグ・マイナーチェンジを受けた。競争力の維持のため掲げられた高い目標は、達成されただろうか。

直接比べるなら、1番良い仕様を並べるのが望ましい。そこで英国編集部が選んだのは、レンジローバー・スポーツ SV エディションワンと、カイエン・ターボ E-ハイブリッド・クーペ GTパッケージ。動力性能的には、それぞれの頂点に君臨するグレードだ。

英国価格は、15万ポンド(約2850万円)を軽く超える。庶民には現実味が薄いことは間違いない。ランボルギーニアストン マーティンフェラーリなどのスーパーSUVへ、スーパーカー級の予算を用意する富裕層にとっても、小さな額ではないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

レンジローバー・スポーツ x ポルシェ・カイエン 比較試乗の前後関係

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