レンジローバー・スポーツ x ポルシェ・カイエン 高級SUVはブランド成長の「金の卵」 比較試乗(1)

公開 : 2024.08.24 09:45

落ち着きを増した艷やかなスタイリング

レンジローバー・スポーツは、徹底的にフラッシュサーフェイス化された、艷やかなボディが目を引く。上質な素材を贅沢に使用しつつ、シンプルな造形のインテリアも好印象。デザインに敏感な人の共感を得そうだ。

美しいだけでなく、フォルムは凛々しい。外から眺めただけでも機能的だとわかり、あらゆる条件へ対応できそうに思える。また、これ見よがしだった先代のSVRと異なり、やや悪趣味なカスタムから距離を置こうとしたようにも映る。

ランドローバー・レンジローバー・スポーツ SV エディションワン(英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー・スポーツ SV エディションワン(英国仕様)

洗練されたスタイリングは、オーバーフィンチ社やカーンデザイン社などが提供する、ボディキットを受け付けない。そのかわり、別のターゲット層を誘惑できるだろう。ランドローバーは、密かにリセットボタンを押したのかも。

車内空間は、カイエン・ターボより長く高いだけに、ゆとりを感じる。後席側の空間はほどほどだが、荷室は明らかに大きい。高さがあり、カイエン・クーペでは厳しい荷物も簡単に飲み込める。大型犬のケージも問題なく載せられる。

カイエン・ターボは、最新のデジタル技術と有能な電動パワートレインで、現代性が追求されている。ダッシュボードにはモニターが整列し、ターボ E-ハイブリッドには、740psを発揮するプラグイン・ハイブリッドが搭載される。

GTデザインのアルミホイールと、カーボンファイバー製ルーフ、エアロキット、大きく口を開いたフロントバンパーがスポーティ。レンジローバー・スポーツ SV以上に速く見える。大きなクルマへ抵抗がなければ。

比較的近いシャシー技術 異なる考え方

それでは実際の走りは? 先ほどリセットボタンが押されたと表現したレンジローバー・スポーツだが、動的特性でもワイルド感は沈められた。従来以上に多様な能力の獲得へ、焦点は向けられたようだ。

パワートレインの電動化は別として、この2台のシャシー技術は比較的近い。どちらもマルチチャンバーのエアサスペンションが備わり、後輪操舵システムが用意されている。トルクベクタリング機能付きのリアデフで、大パワーを受け止める。

ランドローバー・レンジローバー・スポーツ SV エディションワン(英国仕様)
ランドローバー・レンジローバー・スポーツ SV エディションワン(英国仕様)

ところが、姿勢制御に対する考え方は異なる。ランドローバー・スポーツが実装する、6Dインターリンク・アダプティブダンピング・システムは新技術で、ボディの傾きを抑えるアンチロールバーを不要としている。

対してカイエン・ターボのPDCC、ポルシェ・ダイナミックシャシー・コントロールは、スポーティなドライブモードやコーナリング時に、アンチロールバーがボディロールを抑制。優れた操縦性を実現する。

しかし、コンフォート・モードでの直進時やオフロードでは、実質的にアンチロールバーはサスペンションから分離。条件次第では、しなやかな足さばきを叶えている。

タイヤは、レンジローバー・スポーツ SVがオールシーズン。あらゆる路面へ対応させようとする、ランドローバーの意志が現れている。

カイエン・ターボは、オンロード用のピレリPゼロ。オプションで、ハイグリップなPゼロ・コルサも指定できる。ポルシェの狙いを物語る設定だ。

この続きは、レンジローバー・スポーツ x ポルシェ・カイエン 比較試乗(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

レンジローバー・スポーツ x ポルシェ・カイエン 比較試乗の前後関係

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