ブレンボとKWで走りを強化! フォード・フォーカス ST エディションへ試乗 ホットハッチの最適解

公開 : 2024.08.26 19:05

たくましい中回転域 日常的な乗りやすさも維持

さて、公道へ出てみよう。280psで達成する、0-100km/h加速時間は5.7秒。ゴルフ GTIと同等に鋭いが、シビック・タイプRには敵わない。

最大トルクは42.7kg-mと太く、中回転域では特にたくましい。ただし、5000rpmを過ぎるとパワーの上昇に陰りが出始める。気持ち良く変速できる6速マニュアルで、最適なギアを選びたい。

フォード・フォーカス ST 2.3エコブースト・エディション(英国仕様)
フォード・フォーカス ST 2.3エコブースト・エディション(英国仕様)

7速ATも用意され、これはトルクコンバーター式。デュアルクラッチAT級に、迅速な変速はしてくれない。シフトレバーをDにすれば混雑した市街地を安楽に走れるが、ホットハッチとしての魅力を高めるユニットとはいえないだろう。

シフトパドルで、ドライバー自らギアを選ぶことは可能。それでも、一体感が高まるわけではない。低い速度域では、変速でギクシャクする場面もある様子。

フォードは、エディション仕様をサーキット志向に調整したとしているが、公道との相性は高いまま。爽快に郊外の一般道を駆け回れつつ、ファミリーハッチバックとして日常的な乗りやすさも維持されている。

ステアリングホイールは適度に重く、反応はダイレクト。グリップ力やシャシーバランスに優れ、高い速度域での姿勢制御も、同価格帯のどんなモデルにも劣らない。躍動的な操縦性で、本当に運転が楽しいと思える。

手首を柔軟に動かし、タイミング良くペダルを傾けるだけで、直感的にカーブを克服していける。ロータリー交差点ですら面白い。7速ATでも、きついカーブから鋭く立ち上がれるトラクションを得られる。

ホットハッチのスイートスポット

専用チューニングのエディション仕様では、一層高い自信を抱ける。ピレリPゼロ・コルサが粘り強く路面へしがみつき、さらなるコーナリング性能を獲得している。

ただし、高速道路の速度域でも乗り心地は硬め。座り心地の良いシートが、衝撃をなだめてくれるが。ロードノイズも小さくない。

フォード・フォーカス ST 2.3エコブースト・エディション(英国仕様)
フォード・フォーカス ST 2.3エコブースト・エディション(英国仕様)

燃費は、カタログ値で12.5km/L。今回の試乗でも、平均でほぼ同値を得られた。積極的に走る時間が長ければ、相応に悪化するけれど。

英国価格は、通常のフォーカス STで3万7705ポンド(約716万円)から。エディションを指定すると、4万2905ポンド(約815万円)へ上昇する。ゴルフ Rと同等の価格帯といえる。

クラストップの動的能力を備え、日常的に高度なエンターテイメント性を享受できるフォーカス ST。落ち着いた姿勢制御も特長で、ベンチマークといえる完成度にあることは変わらない。

より速いモデルや、四輪駆動のモデルはあるが、楽しさに欠ける場合もある。ホットハッチのスイートスポット的な、フォーカス STの強みにブレはなく、エディション仕様はその魅力をさらに強化している。

こんな素晴らしいドライバーズカーの提供時間は、残り少ない。関心を抱き、入手可能な環境にあるなら、早めに行動へ移された方が良さそうだ。

◯:ドライバーを魅了する動力性能 一体感のある運転体験
△:少し硬めの乗り心地

フォード・フォーカス ST 2.3エコブースト・エディション(英国仕様)のスペック

英国価格:4万2905ポンド(約815万円)
全長:4382mm
全幅:1825mm
全高:1471mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:5.7秒
燃費:12.5km/L
CO2排出量:185g/km
車両重量:1508kg
パワートレイン:直列4気筒2261cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:280ps/5500rpm
最大トルク:42.7kg-m/3000-4000rpm
ギアボックス:6速マニュアル(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ウォリック

    Jack Warrick

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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