【同乗の小学生のみ死亡】 フェラーリ運転の医師を責めるだけ、では子どもの車外放出事故はなくならない!
公開 : 2024.08.20 06:25
フェラーリ特有のブレーキ問題とは
この事故に関してはテレビ、新聞、雑誌、ウェブメディアなど数多くのメディアが報道した。筆者もこれまで5本の記事を書いているが、どのメディアも触れてこなかった問題がある。
それは特有のブレーキ問題である。取材を続ける中でレース関係者A氏よりフェラーリ特有のブレーキについての話を伺った。
この事象が今回の事故とどう関係しているかは不明であるが、30代医師はF8トリブートを事故が起きる直前となる2022年5月に購入している。スピードを出して走ることを好んでおり、これまで速度違反で検挙されたこともあるというが、F8トリブートの扱いに不慣れであった可能性も否定できない。
「フェラーリのブレーキはカーボンセラミック製で、冷えている状態では全然効きません。当然、市街地を走っている程度でブレーキは温まりません。さらに言えば、このフェラーリF8が出荷時に履いているCUP2というタイヤは、雨の日に走れないほどの極端なサーキット指向タイヤで、こちらもグリップしません。
以前、CUP2を履いたスポーツカーとエコタイヤを履いたプリウスの制動距離テストを実施したことがありますが、冷間時では前者のほうが1.5倍近い制動距離となりました。カーボンセラミックブレーキもCUP2も、本当に冷えてると効きません……。
ですので、この一件は一般的なブレーキ試算では結論が出せない内容だと思っており、空走距離を加味してブレーキを掛け始めたのが30m程度手前だったとして、ほとんど速度は落ちていないでしょう。破損状況から見て、100km/hを切れていたかも怪しいと思います。
事故で大破したF8トリブートの写真を見ましたが、一見したところ、60~70km/hの破損状態ではありません。
また、一般道路で120km/hは確かに異常な速度といえるでしょう。医師を擁護する気は全くありませんが、F8トリブートだと、トヨタ・ヴィッツで30km/hまで加速した感覚で120km/h出ています。購入して間もないということで、スピード感がよく分かってなかった可能性もあります。」
2022年10月にフェラーリジャパンからブレーキ問題でリコールが出ていた!
フェラーリのブレーキといえば、もうひとつ気になることがある。事故が発生した直前の2022年6月13日に、フェラーリジャパンから制動装置(ブレーキ)に関しての不具合が公表され、リコールが行われている(リコール届出番号外-3480)。
日本市場で販売されてきた合計26型式 計24車種の合計7286台が対象で、この中には1193台のF8トリブート/F8スパイダー(型式7BA-F142CE)も含まれている。
不具合の原因として以下が記されている。
「制動装置において、マスターシリンダーのブレーキブースター側に装着されている油圧シール部からブレーキフルードがブレーキブースター内に漏れ、ブレーキの一次回路のブレーキフルードがなくなった場合、制動力は二次回路のみで作動する状態となることがある。その状態でブレーキリザーバータンクのキャップを強く締めすぎていると、ブレーキリザーバータンクの換気が減少してタンク内に負圧が発生し、ブレーキの二次回路のブレーキフルードがブレーキリザーバータンクに戻る可能性があり、最悪の場合、ブレーキが効かなくなるおそれがある」
こちらに関しても前述のレース関係者A氏は話す。
「このブレーキの不具合と今回の事故は関係ないと思っていただいて大丈夫です。リコール対象のフェラーリにも乗ってましたが、致命的なトラブルになるような内容ではありませんでした。実際、これが原因の事故も把握していません」
確かに、不具合件数は5件と国交省に届け出されているが、事故発生の有無に関しては「無し」と報告されている。なお、国交省に確認したところ、これらの数字はリコール届出時(令和4年10月13日時点)での数字でそれ以降については把握していないとのこと。