「1家4人」でV12を堪能! フェラーリ612 スカリエッティ UK中古車ガイド 秀抜な操縦性に実用性を融合

公開 : 2024.08.29 19:05

新車時代のAUTOCARの評価は?

史上最も多様な能力を持つフェラーリ、と表現できることは間違いない。更に美しいデザインを得ていたら、AUTOCARでは満点の評価を与えていたはず。動的能力とパッケージングは、間違いなくそれに値する。

ステアリングホイールを握っている限り、スタイリングのことは忘れられる。サイズと重量を意識させることなく、世界で最も多能なグランドツアラーとして評価すべき、素晴らしい才能を体感できる。

フェラーリ612 スカリエッティ(2004〜2011年/英国仕様)
フェラーリ612 スカリエッティ(2004〜2011年/英国仕様)

価格は確かに高い。それでも、ここまで扱いやすくマナーの優れたフェラーリは、他に例がない。(2004年5月25日)

オーナーの意見を聞いてみる

ロバート・ホワイトヘッド氏

「2006年式の612 スカリエッティ HGT-Sを所有しています。かなりロングでワイドですが、バランスが良く回頭性に優れていますね」

フェラーリ612 スカリエッティ(2004〜2011年/英国仕様)
フェラーリ612 スカリエッティ(2004〜2011年/英国仕様)

「ステアリングの重量感も理想的で、フロントタイヤのフィードバックが、しっかり伝わってきます。路面が凍結していても、リアのグリップは素晴らしい。唯一の欠点といえるのは、ボンネットが長い割に、足元のスペースが狭いことでしょう」

「1番気に入っているのは、最高のV12サウンド。エンツォ・フェラーリのサウンドに近いと思います。許す限り、窓ガラスを開いて運転しているんですよ」

購入時に気をつけたいポイント

ボディ

雨の当たる環境に長時間停めておくと、ヘッドライト内に水が侵入するという報告が、多くのオーナーから寄せられている。防水シールの劣化か、製造不良の可能性がある。交換用ユニットは、1つ約1000ポンド(約19万円)だ。

トランスミッション

渋滞のように発進と停止が繰り返される環境では、セミATのクラッチポジション・センサーが不調になる場合があるようだ。

エンジン

フェラーリ612 スカリエッティ(2004〜2011年/英国仕様)
フェラーリ612 スカリエッティ(2004〜2011年/英国仕様)

612 スカリエッティが搭載するV12エンジンは、タイミングチェーン時代前のユニット。タイミングベルトは、4年毎の交換が推奨されている。費用は4000ポンド(約76万円)ほど必要になる。

タイヤとホイール・ブレーキ

19インチか20インチのホイールと、それに組まれるサイドウォールの薄いタイヤは、アスファルトが剥がれた穴などでダメージを受けやすい。徹底的に状態を確かめたい。

HGT-Cパッケージが装備するカーボンセラミック・ブレーキは、時々強くブレーキングすることが機能維持の秘訣。優しく扱い続けると正常に動かなくなり、減っていなくても交換することに。その費用は、1万5000ポンド(約285万円)以上になる場合も。

インテリア

タコメーターの左側にモニターが備わるが、この技術をフェラーリが量産車へ採用したのは、612 スカリエッティから。そのため、バックライト不調などの不具合は生じやすい。フェラーリは、約7000ポンド(約133万円)する新品への交換を推奨している。

スイッチ類の表面のコーティング素材が、高温になると溶け出し、手や衣服に付いてしまうことがある。しばらく乗られていない場合も剥がれがち。

長期間日光にさらされると、内装のレザーがトリム部分などの境目から収縮する場合がある。屋外への駐車時は、フロントガラス・シェードなどを活用したい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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