【美しさ、優雅さ、伝統を讃える】 世界限定10台のロールス・ロイス・ファントム・シンティラ

公開 : 2024.08.22 11:45

古い物語の新たな一章

1910年、ロールス・ロイスのマネージング・ディレクターであったクロード・ジョンソンは、彫刻家でイラストレーターでもあったチャールズ・サイクスにロールス・ロイスのマスコットの制作を依頼。

ジョンソンの頭には既にインスピレーションが浮かんでおり、パリへの旅行でルーブル美術館を訪れた時に、ジョンソンは天から舞い降りた神の姿を表現した、紀元前約190年にさかのぼる大理石のギリシャ彫刻「サモトラケのニケ」に大きな感銘を受けた。

ロールス・ロイス・ファントム・シンティラ
ロールス・ロイス・ファントム・シンティラ

しかし、サイクスは、その彫像がマスコットとしてはあまりにも威圧的で適切な題材ではないと感じており、シルバー・ゴーストで旅することが多かったサイクスは、ロールス・ロイスの優雅な、静かでさりげない力強さを表現するには、より繊細で優美な姿が適していると考えたという。

モンタギュー卿の秘書であり愛人でもあったエレノア・ソーントンがスピリット・オブ・エクスタシーのインスピレーションであったという説が今では一般的に受け入れられているが、ビスポーク・コレクティブはファントム・シンティラを制作するにあたり、新しい素材や「サモトラケのニケ」の魅惑的なイメージをさりげなく想起させるデザイン要素を取り入れることで、ジョンソンの当初のインスピレーションの一部を復活させたという。

素材の魔法

かの有名な「サモトラケのニケ」は、古代ギリシャのパロス島で採掘された、きめの細かい白い大理石で彫刻されており、純度の高さと輝きで知られるこの素材は、数センチの深さまで光が届くため、内側から輝いているかのような光沢を生み出す。

ファントム・シンティラでは、スピリット・オブ・エクスタシーにセラミック仕上げを施し、おなじみのたおやかさと優美な雰囲気はそのままに、パリアン大理石の質感を巧みに表現したことにより、ジョンソンとサイクス両者のビジョンを融合させたロールス・ロイスのアイコンが誕生した。

ロールス・ロイス・モーター・カーズ ビスポーク・カラー&マテリアル・デザイナー セリーナ・メッタン

ロールス・ロイス・ファントム・シンティラ
ロールス・ロイス・ファントム・シンティラ

「私たちは、パリアン大理石の特質に魅了され、この素材を何か月にも渡って研究しました。かの有名な彫像との明確でエレガントなつながりを生み出すために、この唯一無二の石が持つ透明感や純度を捉え、私たちのアイコンの優美な面影を宿すセラミック仕上げを開発しました。」

エクステリアとインテリア

エクステリア:ギリシャのインスピレーション

ファントム・シンティラのエクステリアはビスポークの2トーン仕上げで、ボディ上部にはアンダルシアン・ホワイト、ボディ下部には「サモトラケのニケ」の由来となったサモトラケ島を囲む海の色から着想を得たトラキアン・ブルーが配されている。

繊細なメタリックフレークが海面を照らす太陽光の輝きを模しており、手塗りのダブルコーチラインとスピリット・ブルーのホイール・ピンストライプが、優雅なエクステリアを完成させている。

インテリア:表情豊かな動き

ロールス・ロイス・ファントム・シンティラ
ロールス・ロイス・ファントム・シンティラ

インテリアは、スピリット・オブ・エクスタシーの表情豊かで躍動感のある姿にインスピレーションを得た、さまざまなデザイン要素、質感、連続的なグラフィックで彩られた。

これは、ビスポークのデザイナーと職人たちの緊密なコラボレーションの賜物で、グラフィックはキャビン全体に広がり、途切れることのないエネルギーの流れで乗る人を包み込む。

ロールス・ロイス・モーター・カーズ ビスポーク・カラー&マテリアル・デザイナー カトリン・レーマン

「私たちは水彩画のように見える単一のグラフィックを作り上げようと考え、これを『糸による絵画」と呼んでいます。

光沢を与えるために4つの異なる色、糸の太さ、さまざまな方向のステッチを織り交ぜました。これにより、ロールス・ロイスではこれまでに探求したことのない領域をカバーし、これまでのロールス・ロイス車で最も密度の高い刺繍を実現しました。」

このアイデアを具現化するためのチームを率いたブリエニー・ダドリーは、数々のステッチや色合いの試作を経て、6層にわたってさまざまな密度で複雑に織り込む「タタミ・ステッチ」にたどり着き、インテリア全体は86万9500ものステッチで構成され、その制作時間は40時間以上に及ぶ。

ロールス・ロイス・モーター・カーズ ビスポーク・クラフト・スペシャリスト ブライエニー・ダッドレー

「このデザインを立体的に表現することは素晴らしい創造的挑戦でした。刺繍のディテールや質感、触感を適切なレベルにまで高めるために、ビスポークのデザイン・チームと2年半以上にわたって緊密に協力し合う必要がありました。

レザーとファブリックという2つのキャンバスは、刺繍を施すとそれぞれ異なる表情を見せるため、さらに複雑さが増しました。別々に刺繍を施した36種類のパネルを慎重にぴったりと合わせて配置することで、インテリア・スイート全体にシームレスで流れるようなモチーフをつくり出しました。」と述べる。

ドアに施された刺繍のモチーフは、ブルー・グレー、アークティック・ホワイト、スピリット・ブルー、パウダー・ブルー、パステル・イエローの糸を組み合わせた約63万3000ものステッチにイルミネイテッド・パーフォレーションが加えられるという、これまでのロールス・ロイスで最も複雑なドア・デザインとなっている。

夜になると、刺繍は魅惑的な輝きを帯び、内側から光を放っているような趣を呈し、シートはほのかに反射する光沢のあるツイル生地仕立てで、インテリア内の素材の相互作用による表情に深みを与えながら、ブルー・グレー、アークティック・ホワイト、スピリット・ブルーの糸による約23万6500に及ぶステッチが、4つのドアに展開される複雑なデザインを描くという。

記事に関わった人々

  • AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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