最新BMW M5「ツーリング」 試作車へ先行試乗! 高速道路を重視 F10はアグレッシブ過ぎた?

公開 : 2024.08.23 19:05

BMW M5のワゴンが、V8プラグインHVで14年ぶりに復活 総合725ps 充電が尽きる前に全開でニュルを2周できる 長距離前提のアウトバーン・ランナー 英国編集部が試作車を味見

V8エンジンと電気モーターで725ps

BMW M部門の副社長、ディルク・ハッカー氏は、研究開発の責任者も務めている。グレートブリテン島の北ウェールズには、素晴らしいワインディングがあると認めてくれた。ただし、プロトタイプ上陸に当たっての税関手続きはかなり面倒だったらしい。

AUTOCARでは、試作車をグレートブリテン島に持ち込んで欲しいと、多くの開発技術者へ数10年前からお伝えしてきた。この土地には、相当に手強い路面がそこかしこに存在する。量産後にその事実へ直面するのではなく、開発段階なら対応可能だからだ。

BMW M5 ツーリング(欧州仕様)
BMW M5 ツーリング(欧州仕様)

しかし、最近の英国はEUから離脱してしまった。完成前のM5 ツーリングが、ドーバー海峡を渡ることは従来以上に難しいものになったらしい。

今回、ハッカーが携えてきたのはG99型が与えられた超高性能ワゴン。グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、デモ走行させるためだ。

そこでAUTOCARでは少しの時間を頂戴し、傷んだアスファルトが手強い曲線を描く公道で、味見させていただいた。天気は、もちろん雨がちだ。

既にBMW M5のサルーンは、サーキットでの試乗レポートをお伝えしている。概要はご存知かもしれないが、もう一度確認しておこう。

最新のM5には、歴代で初めて電動化技術が実装された。システム総合の最高出力は、725psもある。V8エンジンと8速ATの間に、197psを発揮する駆動用モーターが挟まり、このモーターにも個別に2速ATが組まれている。

充電が尽きる前に全開でニュルを2周

モーターとエンジンの両方が、同一のトランスミッションを介して駆動する構成で、近年の自動車業界ではP2と呼ぶハイブリッド・システムとなる。メルセデスAMGのE-パフォーマンスは、ATの下流側に駆動用モーターがあり、これはP3と呼ばれる。

「わたしたちが(メルセデスAMGと)同じ手法を選んでいたら、パッケージング上の問題を抱えていたはずです。これなら大きな駆動用バッテリーを載せられ、長い時間パフォーマンスを発揮させられます」

BMW M5 ツーリング(欧州仕様)
BMW M5 ツーリング(欧州仕様)

「充電が尽きる前に、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェを全開で2周できるんです。エンジンを小型化させる必要もありません」。と、ハッカーが鋭い眼差しで話す。競合の弱点を研究済みなことは間違いない。

M5では初めて、後輪操舵システムも搭載された。さらにプラグイン・ハイブリッドだから、車重は増えている。先代のF90世代のM5と比較すると、サルーンでは450kgのプラス。ただし、駆動用モーターとバッテリーが占める割合は、その半分程度だという。

「ベースの5シリーズは、先代より大きく重くなりました。M5では、重量を支え負荷に耐えるよう、シャシーを強化することが主なチャレンジでした」。と彼が説明する。

M5のフロントトレッドは、通常のG90型5シリーズより70mmも広い。グレートブリテン島西部、北ウェールズ・スノードニアの公道は、強力で大柄なモデルにとって理想的な環境とはいいにくい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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