スグレモノなフォルクスワーゲンID.7 2モーターで339psの「GTX」へ試乗 高バランスな電動GT

公開 : 2024.09.11 19:05

0-100km/h加速は5.4秒 ベースとの差は限定的

確認はこのくらいにして、発進させてみよう。0-100km/h加速は5.4秒が主張され、数字通りかなり活発。モデル3 パフォーマンスには及ばないが、ドラッグレースでもしない限り、違いを実感することはないだろう。

アクセルペダルを踏むほどパワーは増大し、その発生はリニア。高負荷時でも、乱暴な感じはまったくない。レスポンスは、高速域でも鋭いままだ。

フォルクスワーゲンID.7 GTX(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.7 GTX(欧州仕様)

リア側の駆動用モーターが優先的に働くため、フィーリングは後輪駆動に近い。とはいえ、これはシングルモーターのID.7の方が当てはまる。実際のところ、普通に運転している限り、パワーの差も感じにくい。

ステアリングは、ダイレクトでレスポンシブ。2328kgの車重から想像する以上に、身のこなしは敏捷といえる。高速コーナーでも、落ち着きは失いにくい。

2基の駆動用モーターは、ダイナミックマネジメントと呼ばれるシステムによって、出力が調整されている。また旋回時は、フロントモーターの回生量を増やしつつ、回頭性を高めるという。

DCCは、ドライブモードによる動的特性の大きな変化を叶えているが、スポーツ・モード時でも乗り心地は良好。多くのバッテリーEVより、運転を楽しめる。真のドライバーズカーとは呼べないとしても。

もっとも、操縦性でも違いは限定的。GTXの方がシャープに反応するものの、ベースのID.7が鈍いわけではなかった。ゴルフ GTIのように別格のスポーツモデルというより、スポーティな上級グレード、といった印象が強いかもしれない。

多くのライバルより高バランスな完成度

今回はスウェーデンでの試乗だったが、実際の航続距離を計測するには時間が足りなかった。表示されていた平均電費の限り、現実的に480km程度は走れそうだが。

英国価格は、6万1980ポンド(約1177万円)から。お安いとはいえないが、見合うだけの装備は備わる。DCCにアダプティブ・クルーズコントロール、ハーマン・カードン社製オーディオ、アンビエントライト、ヘッドアップ・ディスプレイなどが標準だ。

フォルクスワーゲンID.7 GTX(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.7 GTX(欧州仕様)

エネルギー効率に優れる、ヒートポンプ式エアコンはオプション。巨大で調光式の、パノラミック・サンルーフも。

速く洗練され、多くのライバルより高バランスな完成度にある電動サルーン、ID.7 GTX。優秀なモデルを土台に、力強さと運転の楽しさ、快適性を巧みに引き上げることに成功している。

ただし、ベースとなったID.7も魅力的な存在にある。シングルモーターでも運転は楽しく、不足なく速く、英国価格は1万ポンド(約190万円)近くお手頃。航続距離も長い。

とはいえ、高速での長距離移動を得意とする電動サルーンをお考えで、活発なフォルクスワーゲンがお好みなら、ID.7 GTXを気に入るに違いない。

◯:ダイナミックで運転が楽しい 控え目ながら、しっかり差別化されたスタイリング
△:GTIに並ぶようなドライバーズカーとはいえない 馬力と引き換えの、短めの航続距離 お高めの価格

フォルクスワーゲンID.7 GTX(欧州仕様)のスペック

英国価格:6万2600ポンド(約1189万円)
全長:4961mm
全幅:1862mm
全高:1538mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:5.4秒
航続距離:595km
電費:6.1km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2382kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター(リア)+非同期モーター(フロント)
駆動用バッテリー:86kWh
急速充電能力:200kW
最高出力:339ps
最大トルク:55.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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