ドイツの工業力が生んだ「狂気」の自動車デザイン ゲルマン魂が光る奇妙なクルマ 30選 後編
公開 : 2024.09.07 18:25
ドイツの自動車といえば、質実剛健で保守的なデザインというイメージがあるかもしれない。しかし、時には「狂気」まじりの奇妙なデザインが登場する。ドイツで生まれた珍しいクルマを見ていきたい。
もくじ
ーBMW M3ユート(1986年)
ーイズデラ・スパイダー036i(1987年)
ーBMW Z1(1989年)
ーフォルクスワーゲン・フューチュラ(1989年)
ーBMW E1(1991年)
ーヴィーズマンMF30(1993年)
ーポルシェC88(1994年)
ーBMW Z18(1995年)
ーアウディA2(2000年)
ーアウディ・ローゼマイヤー(2000年)
ーローテック・シリウス(2001年)
ーアウディRSQ(2004年)
ーイズデラ・アウトバーン・クリエール116i(2006年)
ーBMW GINA(2008年)
ーフォルクスワーゲンXL1(2013年)
ーBMW i3(2014年)
BMW M3ユート(1986年)
(この記事は後編です。前編と合わせてお楽しみください)
E30型M3は多くの人に愛されているクルマだが、BMWのM部門は1986年に密かにピックアップトラックモデルを製作していた。工場内における高性能の部品運搬車になると考えたのだ。3シリーズのコンバーチブルをベースに、ボディをカットし、M3から最高出力195psの4気筒ガソリンエンジン「S14」が心臓として与えられた。
M部門は同車を2012年まで26年間使用した。量産化されることはなかったが、BMWのユート(ピックアップトラック)ブームの火付け役となり、E39型M5やE92型M3が熱狂的なファンの手によりユート化した。
イズデラ・スパイダー036i(1987年)
036iはコンセプトカーのように見えるかもしれないが、実際には14台生産された。デザイナーのエーベルハルト・シュルツはもともと、1969年にスポーツカーのエラトGTEを設計していた。それがポルシェの目にとまり、同社の下で新たなコンセプトカー開発に取り組むことになった。メルセデス・ベンツ300SLを模倣したCW311である。
やがてチューナーのライナー・ブッフマンと出会い、共同でB&B GmbH & Co Auto KGを設立。CW311のデザイン案はメルセデス・ベンツに見せられたが、量産化は断念される。その後、シュルツはB&Bを離れ、新会社イズデラ(Isdera)にデザインを持ち込んだ。036iはCW311のプラットフォームをベースに、オープントップモデルとして開発された。
BMW Z1(1989年)
当時も今も、奇妙なデザインである。なぜZ1が「消えるドア」を採用したか理解している人はほとんどいない。さらに、プラスチック製のボディパネルは工具を使って1時間以内に交換可能で、カラーリングをいつでも変えることができる。Z1のリードデザイナーを務めたハーム・ラガイは、主にポルシェのカレラGTのデザインチームを率いたことでも知られているが、1960年代後半にはシムカでも働いていた。
Z1はもともと新しいアイデアを模索するために構想され、大量生産を意図したものではなく、わずか2年間のみ生産された。その低く構えたデザインは、やがてZ3に受け継がれることになる。
フォルクスワーゲン・フューチュラ(1989年)
フォルクスワーゲンの主力EV、ID.3が登場してからしばらく経つが、そのスタイリングは80年代後半のミニバンコンセプト、フューチュラ(Futura)に由来していると考えられている。具体的に誰がフューチュラをデザインしたのかは定かではないが、設計者が未来のビジョンを持っていたことは明らかで、それがこの名前の由来となっている。
IRVW(統合研究)部門に属し、EVのような外見とは裏腹に、最高出力82psの1.7Lガソリンエンジンを搭載している。四輪操舵システムとガルウィングドアを備えているが、残念ながらID.3には採用されなかった。