BMW Z4 詳細データテスト 希少なMTで味わえる柔軟なエンジン 直感的でない可変ステアリング

公開 : 2024.08.31 20:25

走り ★★★★★★★★★★

テスト当日は突然の雨が降り、Z4 M40iの公称0−100km/hタイムである4.6秒に並ぶことはできなかった。しかし、もし首を持っていかれるほど強烈な発進加速を最優先するユーザーなら、4WDのAT車を選ぶだろう。

それより重要なのは、各ギアでの中間加速だ。4速での48−113km/hは、たったの5.9秒で、もっとパワフルなM2の8秒フラットをも凌ぐ。ギア比とリアタイヤのサイズが同じなのにだ。さらには、ポルシェ・系マンGT4RSの7.1秒よりも速い。

低速トルクが豊かでフレキシブルなエンジンに、操作しやすいMTとクラッチの組み合わせは、AT全盛の中にあっても、エンストとはほぼ無縁の運転を可能にする。
低速トルクが豊かでフレキシブルなエンジンに、操作しやすいMTとクラッチの組み合わせは、AT全盛の中にあっても、エンストとはほぼ無縁の運転を可能にする。    JACK HARRISON

B58型直6は驚くほどフレキシブルなエンジンで、その点ではMモデルのはるかに神経質なS58型を上回る。常に自分でギアを選ぶので、いつもの変速がクイックなATよりそのことがよくわかる。

これは当代最高の6気筒エンジンのひとつだ。最新のパフォーマンスカーに積まれるエンジンの多くとは異なり、人工的なサウンドは最低限に抑えられている。その代わり、囁くようにスムースで洗練されたトーンで、B級道路を元気に走らせる際の伴奏としては完璧さが際立っている。古き佳きBMWの風情があり、1990年代のZ3を知るドライバーにもしっくりくると思わせるはずだ。

MTとの組み合わせが一般的ではないエンジンとしては驚きを禁じ得ないが、マッチングはみごと。豊かなトルクによりエンストさせることはほとんど無理というくらいで、安心感がありつつ骨の折れるような重さのないクラッチも、エンストしづらさに輪をかけている。

低速トルクも十分にあるため、低回転で走らせるのもお手のもの。それでいて、エンジンを回そうとすれば、喜んで応えてくれる。6500rpmと比較的低いレブリミットや、ロング過ぎないギアリングのおかげで、法定速度を超過せずに2速でレッドラインまで引っ張ることも可能だ。

変速のクオリティは、現代のBMWらしいもの。ストロークが短く精密だが、ちょっと引っ掛かりやゴムっぽい感触がある。荒っぽくゲートを行き来させても抗いはしないが、あまり気合を入れない操作時にも、ドライバーに巧みな入力をさせるのに十分なフィードバックがある。もっとタイトでソリッドな機械的フィールを求めるテスターもいたが、それでもこのクルマにかなり合っていると感じられた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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