BMW Z4 詳細データテスト 希少なMTで味わえる柔軟なエンジン 直感的でない可変ステアリング

公開 : 2024.08.31 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

BMWは、典型的な高性能セダンメーカーとして知られているが、真に偉大なスポーツカーを作ったと評されることは、これまでめったになかった。このZ4についても、同じことを思うかもしれない。ボクスターに肩を並べるようなバランスや精密さを期待するなら、失望するだろう。

可変レシオのステアリングが必ずしも予測のつかないものではないものの、Z4のそれはある程度そういうところがある。5度刻みでどれくらい切り足せばいいか、100%確信を持つことができないのだ。また、表面上はリムからオイルのようになめらかな手応えとフィールが伝わってくるが、グリップレベルをはっきり教えてくれることはない。

ボクスターとスリリングな走りを競うスポーツカーというよりは、完成度の高いオープンボディのクルーザー。主役はシャシーではなく、BMWが誇る直6だ。
ボクスターとスリリングな走りを競うスポーツカーというよりは、完成度の高いオープンボディのクルーザー。主役はシャシーではなく、BMWが誇る直6だ。    JACK HARRISON

前後サイズがかなり異なり、事実上は前世代のミシュランを用いたタイヤのパッケージは、トラクションを高めた代わりにターンインの鋭さが犠牲になっている。結果として、トヨタGR86やマツダロードスターのようなスロットルでのすばらしいアジャスト性も、ポルシェや正真正銘のMモデルにみられる気持ちいいフィールも得られない。

手ごわい道では、ダンパーがタイヤの接地を完璧にコントロールしようとするにつれ、ボディコントロールは不十分なものになることがある。隆起を越える際にパワーをかけていると、エンジン回転が急に上がる場合もある。

しかしながら、わずかにペースダウンすると、Z4はとても心地いいクルーザーという側面を見せる。やや力を抜いて走ると、ボディコントロールは問題ないものになる。アダプティブダンパーをコンフォートモードにすれば、ひどい路面でもすばらしくしなやかにいなしてくれる。コンバーティブルのわりには、ボディ剛性もみごとだ。多少の振動は避けられないが、かなり限定的なものにすぎない。

極限の精密さを求めなければ、ステアリングは十分に直観的。ハンドリングにスロットルでのアジャスト性は欠けているが、後輪駆動のナチュラルなフィールは、経験の浅いドライバーには手に負えない感じが皆無なアウディTTよりずっといい。

このプラットフォームは、並外れたパワートレインと、オープンエアの自由を感じる走りを楽しませてくれるのが最大の魅力だ。シャシー性能をとことん追求するものではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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