高級感と無縁 ゴルフ GTI(Mk1) 気張ってもアンダーステア アストラ GTE 初代から5代目 比較試乗(1-2)

公開 : 2024.09.14 17:46

1974年の登場以来、実用的で高効率、運転の楽しさを提供し続けるVWゴルフ ジウジアーロの初代から、ワッペングリルの5代目まで 歴代の魅力を、ライバルとの比較で英国編集部が再確認

控え目な容姿の印象 高級感とは無縁の車内

ヴォグゾールオペル)・アストラ GTEの最高出力は116ps/5800rpmで、最大トルクは15.3kg-m/4800rpm。0-100km/h加速は8.5秒、最高速度は185km/hと、後期型の1.8Lエンジンを積んだフォルクスワーゲン・ゴルフ GTI Mk1と動力性能で並んだ。

本来なら、今回の比較でも後期型のゴルフ GTIを用意したかったのだが、あいにく叶わず。フォルクスワーゲン・マニアのグラハム・ウェルチ氏が2020年から所有する、美しい前期型にお越しいただいた。

ヴォグゾール(オペル)・アストラ GTE(Mk1/1983〜1984年/欧州仕様)
ヴォグゾール(オペル)・アストラ GTE(Mk1/1983〜1984年/欧州仕様)

改めて観察すると、GTI専用アイテムでコーディネートされているにも関わらず、容姿の印象は非常に控え目。サイドスカートはなく、ドアミラーはブラックの樹脂のまま。シンプルなバンパーも、質実的なスチール製だ。

ホイールは、オプションだったアルミニウム製の13インチ。純正はスチール製だった。タイヤサイズは175/70で、軽自動車と殆ど変わらない。

車内の雰囲気も、高級感とは無縁。ドア内張りの上部から、ドアパネルの一部が露出している。ダッシュボードはフラットで、メーターパネルの深い穴に、スピードとタコのメーターが収まる。

とはいえ、「GTI」の特徴はしっかり備わる。タータンチェックのシートに、3スポークのステアリングホイール、握りやすいシフトノブまで、テンプレートそのもの。センターコンソールの油温計なども同様だ。強すぎない主張が、魅力的にすら思えてくる。

ハードなサスペンションはホットハッチの正解?

筆者が先に試乗したのはアストラ GTEだったが、ゴルフ GTI Mk1の違いは明瞭。操作系に鮮明さがあり、走り出した瞬間から信頼感と興奮が湧き出てくる。

アクセルレスポンスは鋭いが、1.6Lエンジンは低回転域で線が細い。4速マニュアルのギア比はロングで、パワフルさを味わうには回転数の維持が欠かせない。回せば回すほどエネルギッシュに転じ、後期の1.8Lエンジン以上に、甘美な和音を響かせる。

フォルクスワーゲン・ゴルフ GTI(Mk1/1975〜1983年/欧州仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ GTI(Mk1/1975〜1983年/欧州仕様)

ゴルフ GTIはシャシーも若々しい。加減速時のピッチや、旋回時のロールは、アストラ GTEより大きめ。流石に設計が8年も違うから、当然といえるだろう。

それでも、スポーツシートを通じて、全身へ豊かなフィードバックが伝わってくる。軽くリニアに反応する、ステアリングホイールを介しても。フロントタイヤは粘り強く路面を掴み続け、アクセルペダルの加減でのライン調整も容易だ。

本気でカーブへ攻め込めば、コーナー・イン側のリアタイヤが浮き上がる。ドライバーを惹き込む、ゴルフ GTI Mk1の得意技といっていい。ハードなサスペンションがホットハッチの正解なのか、現代のトレンドへ疑問を抱きたくなる。

対するアストラ GTEの英国価格は、1983年で6739ポンド。ゴルフ GTIの方が装備は充実していたが、417ポンド安く、コストパフォーマンスでは優れた。張り出したボディキットとホワイトの塗装で、より現代的にも映ったはずだが、2024年でも同様だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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