目指すはWRC「グループA」 ゴルフ・ラリー(Mk2) x デルタ・インテグラーレ 初代から5代目 比較試乗(2)
公開 : 2024.09.15 17:45
1974年の登場以来、実用的で高効率、運転の楽しさを提供し続けるVWゴルフ ジウジアーロの初代から、ワッペングリルの5代目まで 歴代の魅力を、ライバルとの比較で英国編集部が再確認
もくじ
ーグループAのホモロゲーション仕様
ーランチアS4のドライブトレインを転用
ー筋肉増強剤が打たれたようなスタイリング
ー目立った違いのないG60ラリーのインテリア
ー異なるエンジンの印象 ドラマチックな加速
ーゴルフ G60ラリー(Mk2)とデルタ HFインテグラーレ 2台のスペック
グループAのホモロゲーション仕様
50万台に迫る大ヒットを生んだ、初代フォルクスワーゲン・ゴルフ GTI。当時のクルマ好きは、スポーティなハッチバックを求めていた。
1983年に発売された2代目ゴルフ GTIの売れ行きは、クラフトワークのド直球テクノのように、先が読める展開に近かった。同時に、フォルクスワーゲンがさらなる高性能を目指したとしても、まったく不思議ではなかった。
そんなタイミングでラリー界に巻き起こったのが、自由度だけでなく危険性も高かったグループBカテゴリーの廃止。その最終年となった1986年に、ゴルフ GTI Mk2はグループAカテゴリーへ参戦し、勝利していた。
翌年以降、多くのメーカーがグループAへなだれ込んでくることは明らかだった。ゴルフの性能向上は、モータースポーツ的にも喫緊の課題になった。
果たして、2代目をベースにしたゴルフ G60ラリーは、1989年にリリースされる。新たな世界ラリー選手権(WRC)へ向けた、ホモロゲーション取得を前提とした仕様だ。
直列4気筒エンジンはGTI仕様がベースだったが、国際自動車連盟の規則へ準じ、排気量は1781ccから1763ccへ僅かに縮小。フォルクスワーゲンが開発したスーパーチャージャーをドッキングし、最高出力は162psへ引き上げられた。
このブロワーはクランクシャフトによって駆動され、ターボの弱点といえたブーストラグは皆無。最大トルクは22.9kg-mへ上昇し、その9割は2500rpmから5600rpmという広範囲で生み出された。
ランチアS4のドライブトレインを転用
エネルギッシュなエンジンを受け止めたのが、シンクロ4と呼ばれた四輪駆動システム。通常は前輪へトルクが伝えられるが、トラクションが落ちるとビスカスカップリングが機能し、後輪側へも割り振られた。
これにより、0-96km/h加速は7.6秒を実現。最高速度は209km/hへ上昇した。
さらにゴルフ G60ラリーでは、フェンダーをブリスター状に拡幅。前後に大きなスポイラーが追加され、ヘッドライトは丸ではなく、フォルクスワーゲン・ジェッタ風の長方形へ変更された。通常のゴルフとの、明確な差別化が図られていた。
装備も充実し、レザー内装にパワーステアリング、集中ドアロック、スモークウインドウ、電動サンルーフが標準。そのかわり、英国価格は1万8325ポンドで、ゴルフ GTI Mk2より7326ポンドも高かったが。
これと並行し、イタリアで能力を磨いていたのがランチア・デルタ。発売は1979年に遡るが、四輪駆動のデルタ HFインテグラーレは1987年に登場。当時の英国価格は1万5920ポンドで、前輪駆動のHFターボより約6000ポンド高かった。
デルタ HFインテグラーレも、ゴルフ G60ラリーと同様にラリーのホモロゲーション・モデル。グループBで大暴れした、ランチアS4のドライブトレインが転用されていた。
状況に応じてトルクを必要なタイヤへ分配可能で、センターデフが前後を、トルセンLSDがリア左右の駆動力を変化させた。前後のトルク割合いは、HFインテグラーレ 8Vで平常時が56:44。改良のたびに、リアへの分配率は増えていった。