目指すはWRC「グループA」 ゴルフ・ラリー(Mk2) x デルタ・インテグラーレ 初代から5代目 比較試乗(2)

公開 : 2024.09.15 17:45

筋肉増強剤が打たれたようなスタイリング

今回ご登場願った、レッドのデルタ HFインテグラーレも8Vで、かなり珍しい。後期の16Vではエンジンヘッドが16バルブになり、ボンネットが僅かに膨らんでいる。

技術者のアウレリオ・ランプレディ氏が設計した、フィアット由来のツインカム・ユニットへ、大きなターボとインタークーラーを合体。最高出力187psと、最大トルク30.9kg-mを獲得している。

ランチア・デルタ HFインテグラーレ 8V(1987〜1989年/欧州仕様)
ランチア・デルタ HFインテグラーレ 8V(1987〜1989年/欧州仕様)

大径ブレーキを収めるため、アルミホイールはインチアップ。サスペンション・スプリングとダンパーも専用アイテムが組まれ、意欲的な走りへ備えた。

デルタ HFインテグラーレ 8Vで特に際立つのは、筋肉増強剤が打たれたようなスタイリング。ジョルジェット・ジウジアーロ氏による均整の取れたボディへ、大きく膨らんだブリスターフェンダーが与えられている。

フロントにはスポイラーが追加され、丸目4灯のヘッドライトを包むグリルはブラックアウト。後に16Vを経てエボルツィオーネへ進化し、容姿の凄みは増していくが、筆者は8Vの少し落ち着いた雰囲気が好きだ。

それでも、ゴルフ G60ラリーの方がもっと控え目。現在のオーナーはジェームス・スティーブンス氏で、2013年に購入し、丁寧なレストアを施したという。

英国へ正規に輸入されたのは、71台だけ。右ハンドル仕様の設定はなかった。希少なゴルフなだけに、時間とお金をかける価値はあったといえる。

目立った違いのないG60ラリーのインテリア

少し小さめのタイヤを、外側へ張り出したホイールアーチが覆う。長方形のヘッドライトと相まって、普通ではない雰囲気を滲ませるが、ドアを開くと上級グレードのゴルフ Mk2と印象が重なる。違いといえば、ハーフレザーのスポーツシートくらいだ。

メーターパネルは幅が広く、スピードとタコのメーターが並ぶが、スポーツカーっぽくはない。発進させると、1980年代のフォルクスワーゲン特有の緻密さが、操縦系から感じ取れる。5速マニュアルのシフトレバーは、ストロークが長めだけれど。

フォルクスワーゲン・ゴルフ G60ラリー(Mk2/1989〜1992年/欧州仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフ G60ラリー(Mk2/1989〜1992年/欧州仕様)

速度が上昇すると、ステアリングホイールへ伝わる感覚はゴルフ GTIより僅かに薄い。パワーステアリングの影響だろう。しかし、レシオは適度にクイックで、反応はダイレクト。狭いテストコースを、軽快に巡れる。

6000rpmまで引っ張ると、8バルブの割に洗練された質感だとわかる。スーパーチャージャーの悲鳴も、殆ど聞こえない。

フロントタイヤは粘り強く路面を掴み、リアタイヤが軽快な回頭性をアシスト。シンクロ4システムは、操縦性を重視した設定にある。

加減速時のピッチや、旋回時のロールは大きめ。姿勢制御に落ち着きはあるものの、ホモロゲーション・モデルの割に、サスペンションは柔らかい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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