目指すはWRC「グループA」 ゴルフ・ラリー(Mk2) x デルタ・インテグラーレ 初代から5代目 比較試乗(2)
公開 : 2024.09.15 17:45
筋肉増強剤が打たれたようなスタイリング
今回ご登場願った、レッドのデルタ HFインテグラーレも8Vで、かなり珍しい。後期の16Vではエンジンヘッドが16バルブになり、ボンネットが僅かに膨らんでいる。
技術者のアウレリオ・ランプレディ氏が設計した、フィアット由来のツインカム・ユニットへ、大きなターボとインタークーラーを合体。最高出力187psと、最大トルク30.9kg-mを獲得している。
大径ブレーキを収めるため、アルミホイールはインチアップ。サスペンション・スプリングとダンパーも専用アイテムが組まれ、意欲的な走りへ備えた。
デルタ HFインテグラーレ 8Vで特に際立つのは、筋肉増強剤が打たれたようなスタイリング。ジョルジェット・ジウジアーロ氏による均整の取れたボディへ、大きく膨らんだブリスターフェンダーが与えられている。
フロントにはスポイラーが追加され、丸目4灯のヘッドライトを包むグリルはブラックアウト。後に16Vを経てエボルツィオーネへ進化し、容姿の凄みは増していくが、筆者は8Vの少し落ち着いた雰囲気が好きだ。
それでも、ゴルフ G60ラリーの方がもっと控え目。現在のオーナーはジェームス・スティーブンス氏で、2013年に購入し、丁寧なレストアを施したという。
英国へ正規に輸入されたのは、71台だけ。右ハンドル仕様の設定はなかった。希少なゴルフなだけに、時間とお金をかける価値はあったといえる。
目立った違いのないG60ラリーのインテリア
少し小さめのタイヤを、外側へ張り出したホイールアーチが覆う。長方形のヘッドライトと相まって、普通ではない雰囲気を滲ませるが、ドアを開くと上級グレードのゴルフ Mk2と印象が重なる。違いといえば、ハーフレザーのスポーツシートくらいだ。
メーターパネルは幅が広く、スピードとタコのメーターが並ぶが、スポーツカーっぽくはない。発進させると、1980年代のフォルクスワーゲン特有の緻密さが、操縦系から感じ取れる。5速マニュアルのシフトレバーは、ストロークが長めだけれど。
速度が上昇すると、ステアリングホイールへ伝わる感覚はゴルフ GTIより僅かに薄い。パワーステアリングの影響だろう。しかし、レシオは適度にクイックで、反応はダイレクト。狭いテストコースを、軽快に巡れる。
6000rpmまで引っ張ると、8バルブの割に洗練された質感だとわかる。スーパーチャージャーの悲鳴も、殆ど聞こえない。
フロントタイヤは粘り強く路面を掴み、リアタイヤが軽快な回頭性をアシスト。シンクロ4システムは、操縦性を重視した設定にある。
加減速時のピッチや、旋回時のロールは大きめ。姿勢制御に落ち着きはあるものの、ホモロゲーション・モデルの割に、サスペンションは柔らかい。