V6/ボクサー4の「小さな」高級 ゴルフ VR6(Mk3) x インプレッサ・ターボ 初代から5代目 比較試乗(3)
公開 : 2024.09.15 17:46
1974年の登場以来、実用的で高効率、運転の楽しさを提供し続けるVWゴルフ ジウジアーロの初代から、ワッペングリルの5代目まで 歴代の魅力を、ライバルとの比較で英国編集部が再確認
V6エンジンを積んだ前例のないゴルフ
1991年発売の3代目フォルクスワーゲン・ゴルフは、保守的な新世代だった。ゴルフ Mk2の仕様へ詳しい人なら、Mk3の走りを予想することができた。エンジンとサスペンション、トリムグレードなどの設定は、基本的にキャリーオーバーされていた。
3代目で重視されたのは、安全性の向上と、廃車になってからのリサイクル性。排気ガスの浄化にも技術力は割かれた。それでも、前例のないゴルフも生み出されている。2.8L V型6気筒エンジンを積んだVR6だ。
VR6という新仕様は、フォルクスワーゲン・パサートとコラードで1年前にデビュー。小柄なエンジンサイズと聴き応えのあるサウンドで、大きなファンを獲得していた。そしてファミリー・ハッチバックへの搭載は、新たなカテゴリー創出へ繋がった。
このV6エンジンの特徴は、両バンクのシリンダーが、ヘッドを共有すること。パワフルさだけでなく、滑らかさと扱いやすさ、洗練性を追求したユニットだった。BMW 3シリーズへ近い運転体験を宿す、小さな高級ファミリーカーが目指された。
この考えは、同時期の日本でも取り組まれていたものだった。マツダと三菱は、前輪駆動の小型モデルを想定した、コンパクトなV6エンジンを開発。スバルは、レガシーのパワートレインをひと回り小さいボディへ詰め込んだ、インプレッサを生み出した。
洗練されたアウトバーン前提の特性
スバルは、1980年代には四輪駆動モデルで定評を築いていたが、まだ実用車が中心だった。しかし、水平対向エンジンに過給機を組み合わせたインプレッサ 2000ターボは、ワンランク上の洗練性と動力性能を獲得していた。
初代の特徴の1つが、北米で人気を得た4ドアサルーンに加えて、5ドアのスポーツワゴンが設定されたこと。ハッチバックとステーションワゴンの中間といえるプロポーションで、欧州市場が求める実用性を実現していた。
インプレッサ・スポーツワゴンの全幅や全高は、ゴルフ VR6 Mk3とほぼ同じで、前者の全長が110mm長い程度。1994年の英国価格も殆ど変わらなかったが、性格は明らかに違っていた。
フォルクスワーゲンの狙い通り、ゴルフ VR6は洗練されていた。最高出力176ps、最大トルク23.8kg-mを発揮する狭角のV6エンジンは、直列6気筒の点火タイミングを採用でき、アイドリング時からスムーズに回転した。
高速道路での利用が重視され、110km/h時の回転数は2800rpmと低め。そこからシフトダウンすれば、厚みのある排気音を響かせながら、リニアで力強い加速を披露した。
アウトバーン前提の特性は、シャシー設定にも表れている。安定性が高く挙動を予想しやすいが、反応はおっとり気味。ステアリングは重くスローで、サスペンションは柔らかめ。車重は2代目より増え、コーナーでの荷重移動が滑らかとはいい難い。
高速域でも、車内は快適。穏やかな気持ちで運転できるものの、カーブでは慣性の縛りを感じてしまう。