実は3世代前にもあった「ワゴン」 BMW M5 ツーリング(E61) UK中古車ガイド V10の調子へご注意!

公開 : 2024.09.10 19:05

実は3世代前にも存在したステーションワゴンのM5 ツーリング 最大の魅力を生むV10エンジンは故障も少なくない 出色の潜在能力をヒシヒシと伝える車内 英国編集部が魅力を振り返る

300km/hで走れるNA V10ファミリーワゴン

新世代で復活するステーションワゴンのBMW M5 ツーリングだが、3世代前にも実は存在した。パワートレイン技術者の夢の結晶といえる、F1用エンジンへ影響を受けた、自然吸気のV型10気筒エンジンを搭載して。

300km/hで走れるファミリー・グランドツアラーでありつつ、ランドローバーレンジローバーに迫る実用性を備える。同じ5代目BMW 5シリーズと呼ぶには無理があるほど、大幅な改良を受けていた。

BMW M5 ツーリング(E61型/2007〜2010年/英国仕様)
BMW M5 ツーリング(E61型/2007〜2010年/英国仕様)

このE60/E61型M5で最大の魅力を生んでいたのが、507psを繰り出す5.0L V10ユニット。レッドラインは8000rpmに設定され、コンピューター制御されるスロットルボディが10基並ぶ。それを司るECUは、量産車では最高速だった。

最大トルクは52.8kg-mで、同時期のメルセデス・ベンツE 63 AMGやアウディRS6に比べると細かったものの、0-100km/h加速は4.7秒。249km/hで掛かるリミッターを解除すれば、329km/hでアウトバーンを疾走できた。

ちなみに発売時、M5には「2004年仕様ギミック」と呼ばれる仕掛けが実装されていた。雨天時の安全性を考慮し、エンジンの始動時は405psに制限されており、ステアリングホイール上の「パワー」ボタンを押すことで507psを開放できたのだ。

E61型M5 ツーリングの発売は、サルーンのE60型がフェイスリフトを受けた2007年。3年間での生産数は1028台と少なく、右ハンドル車は222台しか存在しない。

出色の潜在能力をヒシヒシと伝える車内

もうじき最新のM5 ツーリングがディーラーへ並ぶはずだが、英国価格は10万ポンド(約1900万円)を超える見込み。だが、E61型なら3万ポンド(約570万円)前後で探せる。もっとも、V10エンジンの修理代にも同程度の予算が必要かもしれないが。

慌てずに状態の良い例を探し出せば、素晴らしいパフォーマンスを堪能できる。当時のAUTOCARの試乗テストでは、満点の評価を獲得したほど。

BMW M5 ツーリング(E61型/2007〜2010年/英国仕様)
BMW M5 ツーリング(E61型/2007〜2010年/英国仕様)

ダンパーが柔らかいモードなら、橋桁の継ぎ目を優しくいなし、乗り心地はしなやか。スポーティさが抑えられたインテリアへ身を委ねれば、2000年代の上級サルーンの豊かさに浸ることができる。荷室容量は500Lと広く、沢山の遊びアイテムも運搬できる。

それでも、随所にあしらわれたMのエンブレムと、7速セミATのシフトレバー、身体へフィットするスポーツシートなどは、出色の潜在能力をヒシヒシと伝える。英国仕様のスピードメーターには、時速200マイル(321km/h)までしっかり刻まれている。

ロータリーダイヤルと8.8インチ・モニターが組み合わされた、当時のiドライブ・システムは標準。19インチ・アルミホイールにヘッドアップ・ディスプレイ、11種類のシフトモード、LEDテールライト、ステンレス製マフラーなども共通で装備した。

燃費は6.4km/Lと褒められないが、経済性を優先して選ぶクルマではないだろう。新世代がV8プラグイン・ハイブリッドになった今こそ、自然吸気V10エンジンのE61型を検討する価値は高まったといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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