高速・豪華な21世紀のグランドツアラー! ポルシェ・カイエン GTSクーペに試乗 一線を画す運転体験

公開 : 2024.09.20 19:05

有り余るほどパワフルなV8ツインターボ

内装の素材や品質はトップクラス。高級感に溢れ、弧を描く天井が特別な雰囲気を生み出している。GTSグレードではアルカンターラが奢られ、スポーツシートも組まれる。

ローレット加工されたシフトセレクターは、ダッシュボード側。上がRで下がN、押し込めばDと、操作はわかりやすい。センターコンソールには、ドリンクホルダーとワイヤレス充電パッドが与えられた。

ポルシェ・カイエン GTSクーペ(英国仕様)
ポルシェカイエン GTSクーペ(英国仕様)

さて、公道へ出てみよう。カイエンのパワートレインは、V6でもV8でも不満ない走りを叶え、幅広いニーズへ応える。

4.0L V8ツインターボの740psのターボ E-ハイブリッドは、間違いなく万能。スポーツクロノとGTパッケージを組めば、0-100km/h加速を3.4秒でこなすという。実際にアクセルペダルを蹴飛ばせば、反社会的な勢いで速度を上昇させていく。

2000rpmから4500rpmで湧出する最大トルクは、81.4kg-mと極太。ドライバーの気持ちを先読みするように動く8速ATと融合し、目的地まで高速・安楽に移動できる。

ただし、必ずしも高額なトップグレードを選ぶ必要はない。GTSに載る、非ハイブリッドのV8エンジンも素晴らしい。粘り強く、有り余るほどパワフルだ。スポーツエグゾーストを組めば、ドラマチックな排気音も響かせる。

V6エンジンのE-ハイブリッドも有能。エンジンとモーターの協調性に優れ、V8へ近い印象を与える。ただし、電気の力でギャップを埋めるとはいえ、トルクバンドはさほど広くない。カイエンとしては、少し物足りなさを感じる場面はあるかもしれない。

多くの高性能SUVとは一線を画す運転体験

乗り心地は、高級SUVの中では硬め。そのかわり、ドライバーとの一体感は高い。グレードによって洗練性はだいぶ異なるが、GTSの豊かなフィードバックは、スポーティさを求める人を喜ばせるだろう。

カイエン・クーペの真価が現れるのは、高い速度域。僅かに全高が低いとはいえ、大柄なボディの質量を殆ど感じさせない。

ポルシェ・カイエン GTSクーペ(英国仕様)
ポルシェ・カイエン GTSクーペ(英国仕様)

ターボ E-ハイブリッドの車重は約2.5tあるが、その質量とグリップ力を支配下にした、滑沢で鋭敏な回頭性には舌を巻く。純粋なスポーツカーには及ばないものの、多くの高性能SUVとは一線を画す体験を味わえる。

そんな運転の楽しさは、GTSでも同様。濃密な感覚で、身のこなしは機敏だ。

フロントアクスルを通じ、ステアリングホイールには不足ない情報が伝わり、シャシーはレスポンシブでダイレクト。アクセルペダルを踏み込んだ時のバランスは、後輪駆動のスポーツサルーンに迫る。ここでも、多くのライバルを凌駕する。

アダプティブダンパーは優しく入力を吸収し、落ち着いた乗り心地を保ちつつ、引き締まった姿勢制御も両立。最もハードなモードを選んでも、我慢するほど硬くはならない。路面へ呼吸を合わせるような、好ましいフィーリングがある。

走行中の車内は、GTSやターボ E-ハイブリッドでは、一定のロードノイズが響く。走りとの引き換えに、遮音性は劣る。他方、アルミホイールが小径でサスペンションがソフトなE-ハイブリッドなどの静けさは、レンジローバーへ匹敵する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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