一層美しく「野性的」 アストン マーティン・ヴァンテージへ試乗 665psを受け止める有能シャシー

公開 : 2024.09.13 19:05

快適な乗り心地 高負荷で実力が表れるシャシー

路面が乾いている限り、強化されたサブフレームとビルシュタイン社製の引き締まったDTXダンパーが相乗し、アスファルトをしっかり蹴り出す。リアタイヤの幅は、295から325へ広がった。

姿勢制御は引き締まり、トラクションにも不足なし。トラクション・コントロールも、無数といえる細かさで調整できるうえ、トラック(サーキット)・モード時の介入は巧妙。ヴァンテージの圧倒的な動力性能を、思う存分堪能できる。

アストン マーティン・ヴァンテージ(英国仕様)
アストン マーティン・ヴァンテージ(英国仕様)

8速オートマティックは、スポーツ・グランドツアラーとして充分に滑らか。稀に、シフトダウンにもたつく瞬間はあるが、最大トルクは2000rpmから生み出される。低いギアを選ぶ必要性は、必ずしも高くない。

走行時の車内は、上質といっていい。ロードノイズなどは小さくないが、この手のクルマの場合、うるさいと感じるかどうかは主観が大きい。短時間で降りたくなるような音量ではない。

乗り心地は、充分に民主化されている。ダンパーには複数のモードがあり、デフォルトの柔らかい状態なら、舗装のツギハギが多い市街地でも快適と呼べる。ハードに切り替えれば、平滑な路面が必要になるが。

引き上げられたパワーへ注目したくなるが、速度域と足並みを揃えるような積極性や落ち着きが、ヴァンテージの特長といえるだろう。高負荷で実力を発揮するシャシーが、V8エンジンの能力を受け止める。

一層美しく、野性的なアストン マーティン

あら捜しをするなら、60km/hで古いアスファルトを走るような状況は苦手かも。最高速度325km/hのヴァンテージは、こんな環境を好むわけではない。望ましくない揺れが伝わる場面は、ゼロではない。

それでも、間違いなく日常との親和性は向上している。余りの進化ぶりで、異様に感じるほど。

アストン マーティン・ヴァンテージ(英国仕様)
アストン マーティン・ヴァンテージ(英国仕様)

インテリアは一新され、荷室は広い。能力の幅は広く、価格は現実的な範囲。スタイリングは一層美しく、野性的でもある。より長い時間を割いて、真実を明らかにするべきアストン マーティンだと思う。

◯:驚異的なパワーとサウンド フロントエンジン・リアドライブのバランス 筋肉質で魅了されるスタイリング
△:低回転域での僅かなターボラグ

アストン マーティン・ヴァンテージ(英国仕様)のスペック

英国価格:16万5000ポンド(約3135万円)
全長:4495mm
全幅:1980mm
全高:1275mm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.8秒
燃費:8.2km/L
CO2排出量:274g/km
車両重量:1670kg
パワートレイン:V型8気筒3982cc ツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:665ps/6000rpm
最大トルク:81.4kg-m/2000-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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