メルセデス・ベンツ「EQS」名称廃止 Sクラスに統一へ エンジン車とEV、2030年に第8世代導入
公開 : 2024.09.04 06:05
メルセデス・ベンツはEVと内燃機関搭載車の名称を統一する構えだ。「EQS」は2030年のフルモデルチェンジで「Sクラス」に統一される。同じデザインを採用するが、プラットフォームは異なる。
内燃機関とEVを設定
メルセデス・ベンツの次世代「Sクラス」と「EQS」は、製品ラインナップ再編の一環として、1つの名称に統一される。
フラッグシップモデルであるSクラスは、2030年に予定されているフルモデルチェンジで第8世代に切り替わるが、引き続き内燃機関を使用することになる。
そのため、2021年にEVで導入したEQSの名称を廃止することを、同社のオラ・ケレニウスCEOは認めた。「将来的には、内燃機関とEVの2つのSクラスが存在することになる」として、どちらも同様の内外装デザインを採用すると述べた。
しかし、AUTOCARが把握している限り、両車は同じプラットフォームを共有するわけではない。SクラスのEVは次期「MB.EAラージ」プラットフォームを採用し、内燃機関車は現在の「MRA」の改良版になる見込みだ。
スタイリングに大きな違いはなく、内燃機関と電動ドライブトレインの両方が用意される。これは、新型Gクラスにも見られる動きだ。
内燃機関の販売を継続
名称およびスタイリングの統一は、SクラスとEQSの販売不振を受けたものである。Sクラスの販売台数は2024年第1四半期に37%減少した。その結果、Sクラスの生産体制は、EQSも生産するドイツ・ジンデルフィンゲンにあるファクトリー56での1シフトのみに削減された。
メルセデス・ベンツは当初、2023年の世界販売台数204万3800台の20%以上をEVが占めると予測していた。しかし、EV販売台数は2022年比で73%増加したにもかかわらず、シェアは11%にとどまった。
これにより、2025年末までにEVとPHEVを年間販売台数の50%にするという以前の目標が大きく揺らいだ。同社は今年初めの戦略更新で、この見通しを「2030年までに50%」に修正した。
欧州市場全体では、需要鈍化によって2024年のEV販売台数は昨年比でわずか2%しか伸びておらず、アウディ、フォード、ポルシェなど複数のメーカーが内燃機関とハイブリッド車に再び焦点を合わせるようになった。
こうした販売の遅れが、Sクラスに猶予を与えることになった。というのも、メルセデス・ベンツは排ガス規制などに対応するため、「2030年代まで」既存エンジンの電動化に投資し、主要なガソリン/ディーゼルモデルの販売期間を延ばすことにしたからだ。
ケレニウスCEOはドイツの経済誌『ヴィルトシャフツヴォッヘ(WirtschaftsWoche)』のインタビューで、2024年に乗用車事業だけで「デジタル化、エレクトロモビリティ、そして先進的な内燃機関技術に焦点を当てた研究開発および工場に140億ユーロ(約2兆2000億円)」の予算を組んでいることを明かした。
ケレニウスCEOは、「当社のエンジンは常に最高の技術水準にあります。そうでなければ、2027年から28年に内燃機関事業から突然手を引くことになるでしょう」と述べた。内燃機関への投資を拡大するが、EV開発を犠牲にするものではないとしている。