【ショーファーからドライバーズカーへ】ロールス・ロイス・カリナンがシリーズIIへと進化

公開 : 2024.09.01 06:55  更新 : 2024.09.01 11:25

こだわり満載のインテリア

インテリアはインパネ全体がガラスパネルで覆われた。これまではメーター、センターパネル、ダッシュボードまわりと独立していたが、それらが一体に見えるようになった。

そのメーター周りでは新しいデジタルインターフェイス、スピリットインストルメントパネルを採用。文字盤をカラーアクションから選択し、カスタマイズできるようになった。これはBEVのスペクターで初採用されたもので、内燃機関では初めてのものだ。

インテリアはインパネ全体がガラスパネルで覆われた。
インテリアはインパネ全体がガラスパネルで覆われた。    上野和秀

続いて、クロックキャビネットと呼ばれるはめ込み式ケースが装備された。アナログ時計の下にはライトで浮かび上がるスピリットオブエクスタシーを配置。カンさんは、「エンジニアとデザイナーは膨大な時間を費やし、スポットライトのような過剰な効果を避けるために、適切な照度へと入念に調整しました」と説明。

そして助手席側の正面にはイルミネーテッドフェイシアパネルを配置。このガラスパネルの裏側には最大7000個のレーザーエッチングドットが施され、そのドットはそれぞれ異なる角度で配されており、奥行きを感じさせるものだ。またこの縦のラインは、「大都市の高層ビル街、摩天楼からインスピレーションを受けてデザインが施されています」とのことで、フロント周りと共通のモチーフとなる。

また新たなウッドパネル、グレーステインドアッシュという木目パネルをドア周りに採用。近くで見ると繊細なきらめきを放っており、これは染める際に微小な銀の粒子を混ぜ込むことで実現させている。

あえてレザーではなくファブリック

シートのデザインも一新。そこに施されたのはプレースドパーフォレーションというパターンで、ひとりの職人の手で緻密に0.8mmと1.2mm のパーフォレーションが合計10万7000個施されている。これは、「ロールス・ロイスの本社があるグットウッドの上空に広がる雲の形からインスピレーションを得たもの」だそうだ。

最後にカンさんは、カリナン・シリーズIIで初採用したデュアリティ・ツイルについて説明する。これは、竹から作られたレーヨン生地で、創業者のひとり、ヘンリー・ロイス卿が冬季を過ごしたヴィラ・ミモザに隣接する、コート・ダジュールの「地中海の庭園」の竹林からインスピレーションを得たものだ。

カリナン・シリーズIIの価格は4645万4040円からとなる。
カリナン・シリーズIIの価格は4645万4040円からとなる。    上野和秀

ツイル織りのテキスタイルには、創業者のイニシャルである“R”の二重文字を抽象的に解釈したモチーフがあしらわれ、セーリングヨットのロープが織り成すラインを想起させる船舶のデザインとなっている。最大220万回のステッチと17kmもの長さの糸を使用し、20時間以上かけて作り上げられるもの(今回の展示車はレザーシートのため採用されていない)。

ここで気になったのはなぜあえてレザーではなくファブリックを採用したのかだろう。カンさんは、「オプションの中では最も高価なものになります。実は100年以上前、戦前のシルバーゴーストなどの運転席は、汚れを簡単に拭き取れてメンテナンスも楽なレザーを使用し、リアシートはファブリックで快適性を高めていました。その考えをもとに、高級なファブリックを初めて採用したのです」と説明してくれた。

エクステリアを見た瞬間、これまでの腰高感が大幅に減少し、どっしりとした風格を備えていることが伝わってきた。インテリアもロールス・ロイスならではのこだわりが満載である。果たしてここからどのようにビスポークしていくか、まさに、オーナーのセンスが問われるクルマといえる。

なおカリナン・シリーズIIの価格は4645万4040円からで、同時発売のカリナン・ブラックバッジは5415万4040円からとなる。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 撮影

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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