レンジローバー・スポーツ 詳細データテスト 増した円熟味 影を潜めたダイレクト感とシャープな走り

公開 : 2024.09.07 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

このクルマは、レンジローバー・スポーツの新たなトップパフォーマンスモデルだ。レンジローバーのSVは、動力性能に特化したのではない超高級仕様だが、それとはSVの名が示すものが異なる。ただし、先代SVRのオーナーは、おそらく後退したように思えて驚くことだろう。

一見すると、新型SVは先代SVRより控えめだ。大きく開いたフロントのインテークはなく、劇的にフレアしたホイールアーチも、目に焼き付くようなボディカラーも見られない。ただし、よく観察すれば、4本出しテールパイプや空力パーツの存在に気づくはずだ。

エンジンはBMWのS63型。先代M5に積まれたユニットで、4.4Lツインターボで、635ps/76.5kg-mを発生するV8マイルドハイブリッドだ。
エンジンはBMWのS63型。先代M5に積まれたユニットで、4.4Lツインターボで、635ps/76.5kg-mを発生するV8マイルドハイブリッドだ。    MAX EDLESTON

はっきり言えば、JLRのデザインティームは、これまでのSVRよりおとなしく、通常のレンジローバー・スポーツのデザインテーマを残したかった。BMW XMやランボルギーニウルスメルセデスAMG G63といった競合車種のエクステリアが節度に欠けるものであることを考えれば、それらとは違う、ややリスクのあるアプローチだ。

ビジュアルは、メカニズムの改修を声高に訴えてはいないが、これは間違いなく意図的なものだ。英国仕様のレンジローバー・スポーツでは、唯一のV8搭載モデルで、積まれるのは先代BMW M5譲りのS63型4.4Lツインターボ+マイルドハイブリッド。最高出力は635ps、最大トルクは76.5kg-mに達する。先代SVRのスーパーチャージャーユニットより十分にアップしているが、700psオーバーが当たり前のハイパフォーマンスSUVが跋扈する中では目立たない数字だ。

トランスミッションは8速ATで、センターデフとリア電子制御トルクベクタリングLSDを介して、駆動力を四輪へと送る。

しかし、もっとも大きく手が入っているのはアクスルやサスペンション、そしてステアリングだ。サブフレームは新設計で、ワイドトレッドとよりアグレッシブなホイールジオメトリーを生む新たなサスペンションリンクを採用する。マルチチャンバー式エアスプリングはスペシャルチューンで、通常モデルより25mmローダウンしている。

それらと合わせて、通常モデルのアダプティブダンパーとアクティブスタビライザーは、ゲイドンいうところの6Dダイナミックこと、インターリンク式のアクティブダンピング油圧系に置換。ピッチとロールのコントロールを改善しつつ、重量を抑える。四輪操舵は通常モデルからのキャリーオーバーだが、フロントにはクイックになった新型ステアリングラックを採用した。

鋳鉄ブレーキと23インチ鍛造ホイール、オールシーズンタイヤが標準装備。全天候型の使い勝手やオフロード性能をもたらすタイヤを履いていてさえ、旋回時の横Gは先代SVRより最大で25%近く増しているというのが公式発表だ。

テスト車には残念ながら未装着だったが、オプションではレンジローバー初のカーボンホイールとカーボンセラミックブレーキも設定。バネ下重量は、じつに76kg削減できる。2485kgという公称重量は、先代SVR比で150kg程度の増加だ。テスト車の実測値は、燃料をタンクの2/3まで入れて2546kgだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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